鬼才ポン・ジュノNetflix新作は「未来少年コナン」の女の子バージョン!
韓国の鬼才ポン・ジュノ監督が22日、六本木で行われたNetflixオリジナル映画『オクジャ/okja』来日記者会見に、主人公の少女ミジャを演じたアン・ソヒョンと共に来場、本作は「『未来少年コナン』の女の子バージョンだ」と説明した。
映画『殺人の追憶』『グエムル -漢江の怪物-』などで知られる鬼才ジュノ監督の最新作。山奥で巨大生物オクジャと暮らしていた少女が、巨大企業に連れ去られたオクジャを救うべく旅に出るさまを描き出す。Netflixのオリジナル作品となる同作は、劇場公開よりも、ネットでの動画配信を前提とした公開スタイルが、今年5月に行われたカンヌ国際映画祭で物議をかもした渦中の作品でもある。
その件について「わたしは、映画の製作者として、映画とは何かという定義を語ることに難しさを感じています。ただ、わたしとしては大きなスクリーンを見ながら、いろんな人が集まって、笑ったり泣いたりする姿がもっとも美しい姿であろうという思いに変わりはありません」と切り出したジュノ監督は、「でも、現代はテクノロジーの驚くべき進化によって、デジタルストリーミングで映画を観るということもひとつの形じゃないかと考えています。1960年代にもテレビが登場して、映画にとって代わられるのではないかと恐怖心を抱く人がいましたが、実際には映画とテレビは共存しています。だからデジタルストリーミングと映画は共存するんじゃないかと思っています。ただし、共存の方法には規定が必要となるので、映画産業にかかわっている人たちがこれから整理することになると思います」と展望を語った。なお、本作を撮影する際には配信ということを意識せずに「配信だとか劇場公開だとかを意識することなく、今までの映画と同じように撮影を行った」という。
そしてクリエーターに完全なる創作の自由を与えてくれるのがNetflixであり、それが多くのクリエーターを魅了する点である、と付け加えたジュノ監督は「そして映画監督は創作の自由と同じくらいに、映画館で上映してほしいということも渇望している。それにもNetflixは非常に柔軟な対応をしてくれている。韓国では100数館での公開が決まっているし、アメリカやイギリスでも館数は少ないながらも劇場公開が決まっている。もちろんカンヌやシドニーなどの映画祭でも上映されたし、そういう意味では配信だけでなく劇場でも公開はできるものなので、これからは多くの映画監督が関心を示すんじゃないかと思う」と説明した。
カンヌ国際映画祭の公式会見では、本作の自然描写は宮崎駿作品から影響を受けたことを明かしていたジュノ監督であるが、実は主人公の少女の描写にも宮崎作品からの影響があるのだとか。「ある意味、主人公のミジャはずっと走り続けて、誰も止められないから『未来少年コナン』の女の子バージョンだと言える。『コナン』の序盤ではおじいさんと魚を捕ったり、自然の中で暮らしているし、そういう部分でもつながりはあるかもしれない」。
さらに、「宮崎監督は偉大な存在ですが、影響はそこだけに限定しているわけではない」と続け、「ジョージ・ミラー監督は豚を主人公にした映画を2本(『ベイブ』『ベイブ/都会へ行く』)撮っているが、そこからもインスピレーションを受けている。そしてオクジャとミジャがニューヨークのド真ん中に行き、パレードに遭遇するシーンは押井守監督の『イノセンス』がインスピレーションの源であるし、いろいろな映画がこの映画のインスピレーションの源となっているんです」と明かしてみせた。(取材・文:壬生智裕)
映画『オクジャ/okja』は6月28日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング開始