桃井かおり&イッセー尾形の特別な関係
日本とラトビアの合作映画『ふたりの旅路』(6月24日公開)で、『太陽』(2005)以来の映画共演を果たした桃井かおりとイッセー尾形が、約30年以上にわたる“特別な関係”について語った。古くは、桃井主演の「危険なふたり 飛んで火に入る就職編」(1985)や「花へんろ」4部作(1985~97)などのテレビドラマでイッセーが助演を務め、ひょんなことから“距離感”が近くなったという。
「仲良くなったキッカケは、二人とも閉所恐怖症だとわかって(笑)。『花へんろ』のロケ地が愛媛県の松山だったとき、お互い飛行機に乗るのが苦手だってことで親近感が湧いたんです。イヤだよねー、怖いよねえーって」(桃井)、「そうだった。機内に乗り込んだらすぐに雑誌を読んで、気を紛らわせるのがコツ、と桃井さんにアドバイスされました(笑)」(イッセー)。
その後、1990年には“二人芝居”に挑戦。大好評につきシリーズ化され、2012年まで断続的に舞台に立ち、2002年には海外公演(ロンドンとミュンヘン)も挙行した。桃井はイッセーに、キャリアの転機となる言葉をもらっていた。「わたしね、役者生活に飽きているんだけど、どうしたらいいですか……と相談したことがあったの。そうしたら『当然だよ。だって“桃井かおり”しかやってないんだから』とズバリ指摘され、それから方向性を変えて、しっかり役作りをするようになったんです」。
現在では共に、国際的なアクターとしても活躍しているが、映画はロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督作『太陽』以来の共演。昭和天皇と香淳皇后という大役がいまだ強く印象に残っている中、同じ夫婦役でも『ふたりの旅路』の設定はかなり違う。桃井ふんするヒロインが北欧の地、ラトビアの首都リガで開催される着物ショーに参加し、そこで過去の震災で行方不明になっていた夫と不思議な再会をすることに。現実とは思えぬ夫の存在に、彼女は大いに戸惑う。監督はラトビア出身のマーリス・マルティンソーンスで、桃井とは『雨夜 香港コンフィデンシャル』(2010・未公開)、『オキ - イン・ザ・ミドル・オブ・ジ・オーシャン(原題)/ OKI - In the Middle of the Ocean』(2014・未公開)に続いて3度目のタッグ。イッセーは“盟友”に誘われて、出演を快諾した。
「桃井さんとの芝居はいつも、事前に準備が必要ないんです。二人で手探りしていくのが楽しい。何が飛び出してくるのかわからないのがスリリング」(イッセー)、「この映画でも、脚本には書いていないシーンやセリフのやり取りを、二人で随分作りましたね。それはやっぱりイッセーさんとでしかできないこと」(桃井)。
お互いの信頼関係がなせる離れワザ。最新作でも二人は、“唯一無二の世界観”を作り上げている。(取材・文:轟夕起夫)
映画『ふたりの旅路』は6月24日よりユーロスペース、丸の内TOEIほか全国順次公開