「いつか世界の舞台に」高校卒業、俳優一本になった中川大志の野心
大河ドラマ「真田丸」出演や主演映画の公開、CMなどで存在感を示す、人気急上昇中の俳優・中川大志。そんな彼が映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』で、物語の重要な役割を果たすヘンリー・ターナーの吹き替えを担当している。世界的大ヒットを記録している『パイレーツ』最新作への抜てき、まさにブレイクといえる活躍だが、本人は現状をどう考えているのだろうか。
最初は習い事を増やす感覚だった
先日、日本で行われた同作のプレミアイベントの壇上、自身が吹き替えを務めたヘンリー・ターナー役のブレントン・スウェイツや、大スターのジョニー・デップらと並び、彼らと握手やハグをする中川の姿があった。6月14日に19歳になったばかりの青年、3月までは高校生だった。
「アフレコを行い、上海でのプレミア上映でも(ジョニーらキャストと)ご一緒したのですが、まだ実感がないというか不思議な気持ちなんです」と率直な感想を述べた中川。それだけ自身にとっても夢のような出来事だった本作への参加だが、最初から俳優業への覚悟をもって業界に飛び込んだわけではなかったという。
「3歳からダンスをやっていて、ミュージカルの経験もありました。ダンスだけではなくお芝居もおもしろいなと思っていたとき、いまの事務所からスカウトされたんです。でも事務所に入ったからといって、すぐどうにでもなる世界でもなく、最初は習い事を一つ増やすぐらいの感覚だったんです」と当時を振り返る。
そこから映像の現場を経験していくうちに、徐々に気持ちの変化が生じてきたという。「最初は軽い気持ちでしたが、大人の中に交じってものを作るということは、なかなか刺激的で、だんだんと芝居のおもしろさを感じてきたんです。そうしているうちに心の中に、俳優という仕事が占める割合がどんどん大きくなっていることに気づいたんです」。
大河ドラマ「真田丸」で大きな刺激
小学5年生のときに俳優デビューした中川は、大ヒットドラマ「家政婦のミタ」をはじめ、すでに多くの出演作があるが、中でも大河ドラマ「真田丸」への出演(豊臣秀頼役)は大きかったという。もともと“国宝級イケメン”などと注目され、メディアへの露出も増え、ブレイク必至といわれていたが、大河ドラマをきっかけに知名度を上げた。
「すごく楽しめた現場でしたし、先輩の背中を見てとても大きな刺激をもらいました。反響も大きく、ご年配の方にも声をかけていただくことが多くなりました」と周囲の変化も感じたというが、「国宝級という意味はよくわからないので、意識したことはないですが、世間の皆さんが選んでくださったのはうれしいです」と照れ笑いを浮かべていた。
そして今年3月、高校を卒業後、大学へは進学せず「俳優一本」として新たなスタートを切った。「まだ3か月しかたっていないので、大きな変化を感じたことはありませんが、学生時代は仕事がない日には学校へ行っていたので、とにかく時間がなかった。でもいまは仕事がない日に休めるのはありがたいですし、気持ちをすべて仕事に向けられるのは大きいです」。
そんな中川が初めて実写作品の吹き替えという仕事にチャレンジした『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』。「普段は表情とか動きで感情を表現できたのですが、声だけで演じる経験をできたことは大きかったし、得るものは多かったです」と胸を張ると、「あまり表には出したくないのですが」と前置きしつつも「僕は負けず嫌いな部分もあるので野心はあります。吹き替えという立場でしたが、ハリウッド作品にも触れることができ、いつかは世界の舞台に立ちたいと思いました」と目を輝かせて大きな目標を語っていた。(取材・文・写真:磯部正和)
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』は全国公開中