生田斗真がトランスジェンダーの女性役…監督が明かす徹底したこだわり
第16回ニューヨーク・アジア映画祭で上映された映画『彼らが本気で編むときは、』について荻上直子監督が、7月8日(現地時間)リンカーンセンターでインタビューに応じた。
本作は、恋人を追って家を出た母親ヒロミ(ミムラ)に育児放棄された少女トモ(柿原りんか)が、叔父マキオ(桐谷健太)と彼の恋人でトランスジェンダーのリンコ(生田斗真)のもとで暮らすことになり、彼らとの生活を通して真の愛情を学んでいく姿を描いた作品。『かもめ食堂』などの荻上直子が5年ぶりに監督を務めた。
トランスジェンダーを描いてはいるが、家族の物語を映画にしたかったと言う荻上監督。「14歳のトランスジェンダーのお子さんが、すごく理解のある母親に『おっぱいが欲しい』と言うと、そのお母さんがブラジャーにパットをつけたフェイク“おっぱい”を作ったという新聞記事を読んだんです。素敵な話だと思いました。わたしはそのお母さんにお話をきかせてもらい、彼女たちが今作の制作のきっかけになりました」と明かす。
LGBTへの理解は、アメリカ在住時に受けた影響が大きいのかと聞くと「それは、絶対あると思います。USC(南カリフォルニア大学)に通っていたときも、ゲイの友達がたくさんいました。USCのような競争の激しい学校にいると、わたしに優しくしてくれる生徒は彼らでしたね。彼らにいろいろと助けてもらったり、大家さんがトランスジェンダーだったりして、アメリカではすごく身近に友達になれる環境があったのに、日本に帰るとそういうLGBTの友人が全然いなくなってしまい、自分の中ですごく違和感がありました。自分はLGBTではないのですが、いつかLGBTを題材にした映画を作らなければいけないと思ったんです」と長年温めてきた企画であることを語った。
トランスジェンダーの人たちにもさまざまなタイプがいるが、本作で生田が演じるリンコはどのようにして作り上げたのだろうか。「脚本からはみ出ることはしてほしくなかったので、声のトーンに髪形、洋服の感じから胸の大きさまで、生田さんのキャスティング後に、一から彼と衣装さん、メイクさんらと話し合いました。撮影当初のリンコの声が高すぎるところは、再度録音し直したりもしました」と徹底したこだわりを見せ、生田が撮影中は自宅でもリンコの格好をしていたことも明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)