芳根京子、ブログ更新に「誤解されることなく気持ちを届けたい」
2013年にテレビドラマ「ラスト・シンデレラ」(フジテレビ系)で女優デビューして以来、2015年「表参道高校合唱部!」で1,000人のオーディションを勝ち抜いてドラマ初主演を飾り、2016年のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」でヒロインに抜擢されるなど快進撃を続けてきた芳根京子。2015年に大ヒットを記録した劇場アニメを実写化する新作映画『心が叫びたがってるんだ。』(7月22日公開)、通称『ここさけ』では言葉を発せない難役に挑み、「今の自分のすべてを出し切った」と怒濤の日々を振り返っている。
朝ドラのヒロインから次のステップへ
2016年10月から2017年4月にかけて約半年間、朝ドラのヒロインとして駆け抜けた芳根だが、『ここさけ』では演じるキャラクターに近づくため、撮影前に30センチ髪を切ったことが気持ちを切り替える助けになったという。「ここまでバッサリ切るのは初めてだったんですけど、二十歳になって長らくやらせていただいた『べっぴんさん』も一区切りついたこともあり、気持ち的にはすごくすっきりしました」。
芳根演じる成瀬順は、幼少期のトラウマが原因でしゃべれなくなった繊細な女子高生。内向的な彼女がミュージカルのヒロインを演じることになり、クラスメイトの坂上拓実(中島健人)、仁藤菜月(石井杏奈)、田崎大樹(寛一郎)らと絆を育んでいく。芳根は順を演じる際に「順を一番応援する人間になろう」と決意し、アプローチの方法をガラリと変えた。「順とわたしは違うことの方が多いと感じたのですが、この作品は順を応援してもらえないと始まらないと思うんです。今までだったら順と自分の共通点を探して寄せていったり、監督に『大丈夫ですか?』『行き過ぎていませんでしたか?』と確認していたんですけど、今回は自分で考えて勝負して、最終チェックが監督というつもりで臨みました」。
順と違って「思っていることを言ってしまうタイプなので、ストレスを溜めるようなことはなく秘密もない方だと思います」という芳根だが、クライマックスで順がこれまで言えなかった思いを込めて歌う歌には「グッときた」そう。「ありがとう、ごめんなさい、おはよう、おやすみなさい……そんな日常的な言葉が詰まっている歌なんです。順が言えなかった言葉を、歌を通してお母さんに伝えようとしているのだと思うと……。気持ちがたかぶり、そういうシンプルな言葉こそ大切に伝えたいと思うようになりました」。
言葉の難しさを実感するブログの更新
順にとって唯一の自己表現が「歌」であるように、芳根にとって大切なツールが「ブログ」。芳根が多忙な合間をぬって更新している「芳根京子のキョウコノゴロ」と題したブログは、撮影現場の様子からプライベートまでをつづっている。「素」の芳根を感じられるリラックスした文体だが、実は言葉の選び方はかなり慎重だ。「『てにをは』だけでも全然印象が違ってきますし、誤解が生まれやすいと思うんです。読んでくださる人全員に理解していただくのは無理でも、一人でも多くの方に自分の気持ちを誤解されることなく伝えたいと思っていて。文章が得意ではないぶん、一文字一文字注意しながら書いています。もともとブログに注目してほしいという意図から始めたわけではないのですが、『芳根も頑張っているから一緒に頑張ってみようかな』とか、そんなきっかけになればうれしいです」。
萩原みのり、石井杏奈、玉井詩織…共演者との交流
『ここさけ』は中島、石井、寛一郎ら同世代のキャストが集まった現場だっただけに仲睦まじく、特に石井とは撮影後も食事に行くなどまめに連絡をとっているそうで、芳根のブログからも共演者との縁を大切にしているのがうかがえる。「『表参道高校合唱部!』のみのりちゃん(萩原みのり)とは毎日のように連絡を取り合う仲ですし、『幕が上がる』(2015)のしおりん(ももいろクローバーZ・玉井詩織)とも仲がいいです。あとは『先輩と彼女』(2015)でご一緒した志尊淳くんは先日舞台を観に行きましたし、スタジオで姿を見かけたときにはメッセージを残したり。積極的に連絡するタイプではないので交友関係は広くはないのですが、狭く濃くお付き合いさせていただいています」。
デビューしてから約4年半、映画、テレビドラマ、舞台、CMと多岐にわたって活躍し続けてきた芳根。母親譲りだというポジティブ思考で乗り切ってきた彼女だが、リフレッシュは必要だという。「疲れていたとしてもずっと寝ているよりは昼には起きて家族と出かけようとか、夜ご飯だけでも友達と食べようとか、一日に一回は外に出るようにしています。朝ドラの期間も基本的にスタジオにこもりきりだったのでスケジュールがびっしりでも、『この日だったらスタッフさんと夜ご飯はいけるかな』とか、お出かけの時間を持てるように心がけていました」。そのようにバランスを大事に、マイペースに、女優としてのモチベーションを保つ姿勢に二十歳にしてプロフェッショナルな芳根の強さを見た。(取材・文:編集部 石井百合子)