「ナポレオン・ソロ」ロバート・ヴォーン、遺作は脳梗塞で口がきけなくなった父と娘の物語
テレビシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」でおなじみの名優ロバート・ヴォーンさんの遺作となった映画『ゴールド・スター(原題)/ Gold Star』について、主演・脚本・監督を務めたヴィクトリア・ネグリが、7月19日(現地時間)ニューヨークのカフェベネで取材に応じた。
主人公は、音楽学校を中退し、何の目標も持たずにただ生きていた20代のヴィッキー(ヴィクトリア)。ある日彼女は、疎遠だった90歳の父親カーマイン(ロバート)が脳梗塞を患い入院したという知らせを母親ディアンから聞く。ヴィッキーは脳梗塞で口がきけなくなった父の介護をすることになるが、さまざまな困難が待ち受けていた。
女優として10年以上のキャリアを持つヴィクトリア。ニューヨーク大学で演劇を学び卒業したものの、仕事のなさにフラストレーションを感じていたそうだ。それでも(独立系作品を通して)プロダクション・デザイン、アシスタント・ディレクターをするなどしながら脚本も執筆していたという。そんな彼女が今作で監督を務めることになった経緯は「2011年に実の父が脳梗塞になって、その時に自分がやりたいことをするには限られた時間しかないことに気づかされたの。それで今作を手掛けることにしたのよ」と語る。父親の介護をしている間に監督をする決意をした彼女は、当時24歳で、父親は87歳だったそうだ。
名優ロバート・ヴォーンさんのキャスティングについては「幸運にも雇ったキャスティング・ディレクターのジュディ・ボウマンが撮影地コネティカット出身で、脚本の内容をよく理解し共感してくれたの。そんな彼女のおかげで、ロバートが脚本を読んでくれたのよ。彼はわたしたちが支払える出演料で参加してくれただけでなく、交渉もせずに(オファーの)1週間後には参加を決めてくれたわ」と話す。ロバートさんの決め手となったのは口のきけない役柄だったこと、さらに身体的なチャレンジが必要だったことだそうだ。
介護の仕方を実際に学んだことについてヴィクトリアは「特に介護で気をつけなければいけないのは、介護する患者を持ち上げる際に、いかに彼らの体を痛めないように動かすかで、実際に介護士や長年父の介護をしていた母から学んだの。映画内でカーマインを車椅子に乗せたり、クレーンという機器で運んだりするシーンは、実際にわたしの父の介護と同じなのよ」と明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)