全米を震撼させた爆弾魔ユナボマー、ドラマで描かれる思春期の体験が壮絶…
全米を震撼(しんかん)させた実在の爆弾魔ユナボマーことセオドア・カジンスキーと、彼を追跡したFBIエージェントを描いた話題のテレビドラマ「マンハント:ユナボマー(原題) / Manhunt: Unabomber」について、カジンスキーを演じるポール・ベタニーが、7月24日(現地時間)ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
同ドラマは、カジンスキーの追跡にあたり、情報収集への革新的なアプローチで事件解決に貢献したFBIエージェントのジム・フィッツジェラルド(サム・ワーシントン)に焦点を当てた作品。彼はFBIの保守的なやり方に異議を唱え、言語学という新たな観点に着目。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙に送りつけられたユナボマー・マニフェスト(犯行声明文)の論調から、20年近く捕まらなかったカジンスキーの正体を解明していく。
天才的な数学者カジンスキーについてポールは「彼の行為には誰も同情しないだろうけど、このドラマではIQ167もある子供が2学年飛び級して、思春期に既にハーバード大学に進学。さらに3年間もCIAの前身機関で(スパイ養成する心理学者の行動心理実験における)被験者になっていたことに触れ、同情の余地があるように描かれているんだ。ちなみにそこでの彼のコードネームは『Lawful』で、そのプログラムではかなり屈辱的な思いをさせられていたんだよ」と話す。ここでの体験が後のカジンスキーの犯行心理に大きな影響を与えたそうだ。
カジンスキーを演じる上で行ったリサーチについては「多くの研究をしてみたけど、そのほとんどは役に立たなかったね。役立ったのは、実際に彼のように山小屋で一人暮らしをしたことかな。週末などに頻繁に行って、最も長かったときは3日間、誰ともコンタクトを取らなかったんだ。E-mailやニュースもチェックしないで、誰とも会わない生活を3日間続けただけだったけど、月曜日に普通の生活に戻り仕事をしようとすると、声がしゃがれてうまく出せなかったんだ」と明かした。その他、カジンスキーが読んでいた本のリストも役立ったという。
ユナボマー・マニフェストの内容については「産業革命は人類にとって災難だったと記されていて、われわれは機械に頼りすぎているとか、テクノロジーがわれわれを閉じ込めているなど、今日の僕らでも共感を覚える部分もあったよ」と語り、さらに「そういったテクノロジーで子供たちと連絡が取れることで、直接のコンタクトが失われているのかもしれない」と考えさせられたことも明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)