チャールズ皇太子からアドバイスも!『ベッカムに恋して』監督の最新作
インド・パキスタンの分離独立前後の時代を描いた話題作『ヴァイスロイズ・ハウス(原題) /Viceroy's House』について、グリンダ・チャーダ監督と主演マニシュ・ダヤルが、8月30日(現地時間)ニューヨークのIFCで行われた上映後のQ&Aで語った。
舞台は、第2次世界大戦後、宗教上の民族対立が激化するイギリス領インド。総督として赴任したマウントバッテン(ヒュー・ボネヴィル)は、インド独立について、ガンディー、ネルー、ジンナーら指導者たちと会談を重ねた結果、インドはヒンドゥー教徒の国インドとムスリムの国パキスタンとに分離し独立することになった。そんな激動期を背景にマウントバッテンの召使いでヒンドゥー教徒の青年ジート(マニシュ)とムスリムの女性アーリアの恋も描かれる。監督は映画『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ。
今作の企画は、自身の祖父の家探しから始まったというチャーダ監督。「10年前にBBCのドキュメンタリーシリーズ『Who Do You Think You Are?』に出た際に、初めて(自分のルーツ)パキスタンを訪れたの。驚いたことにパキスタンの人々はわたしを歓迎してくれて、祖父が当時住んでいた家を探してくれたわ。最終的に祖父の家を見つけると、そこにはインドから来た5家族の難民が住んでいて、それまで今作では政治指導者を描くつもりだったのだけれど、その時に普通の人々も描きたいと思ったのよ」と製作の経緯を語った。
チャーダ監督は、ノンフィクション本「今夜、自由を」を参考に今作の脚本を執筆しているとき、あるレセプションでチャールズ皇太子に会ったそうだ。「彼に『あなたの大好きな叔父さん(マウントバッテン)の映画を作ります』と伝えると、彼から『どの本を基に映画化するの?』と聞かれ、『今夜、自由を』だと答えると、彼は『その本も良いが、別の本を知っている? その本を読めば、僕の叔父がいかにイギリス政府に(インド・パキスタン分離独立に関して)ハメられたかがわかるよ』と教えてくれたの」と明かした。意外な接点からさらにマウントバッテンを掘り下げていったようだ。
一方、当時の召使いとしての作法を学んだという主演のマニシュは「実際に当時インド総督の家に仕えていた召使いは、多くを制限され、自分の決断さえも感情的に表現できなかったんだ。そんな作法を身に付けてイギリスの俳優の前で演じていたんだけど、個人的にはその作法に意見したくなったよ(笑)」と本音を漏らしていた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)