中村獅童「人生は自分との戦い」復帰後の新たな決意
歌舞伎役者の中村獅童が30日、東京・東劇で行われた映画『NEWシネマ歌舞伎 四谷怪談』の初日舞台あいさつに登壇。今年5月に初期の肺腺がんの手術を受けた中村は「元気になったので今日はみなさん、どうぞ写真を撮ってください」と笑顔であいさつ。さらに「3週間くらい前にインスタを始めてみたんです。そういうの弱点だったけど」と会場に語りかけ、療養とリハビリを経て7月末に仕事復帰し、順調に回復していることを印象づけた。
本作は、昨年6月に渋谷・コクーン歌舞伎の第15弾として上演された「四谷怪談」を映像化したもの。歌舞伎の舞台公演をHD高性能カメラで撮影して映画館で楽しむ「シネマ歌舞伎」シリーズの第28弾。人間の欲と弱さや恐ろしさが渦巻く古典「四谷怪談」に、コクーン歌舞伎を初期から手がける舞台演出家の串田和美が現代的な解釈を加え、メガホンを取った。中村は、己の欲望に駆られて後先を考えずに享楽的な日々を送る主人公・民谷伊右衛門にふんしている。
6回目のコクーン歌舞伎で今回初めて伊右衛門を演じた中村は「伊右衛門といえば『色悪』という悪くてかっこいい二枚目の役柄ですが、それを一度ぶっ壊してもいいんじゃないかというお言葉を、串田監督からいただきまして」と役作りについて語り、コクーン歌舞伎を始めた故・十八代目中村勘三郎さんの名をあげつつ「コクーン歌舞伎って、勘三郎兄さんのときから、時代を切りひらいていく戦いだったんだと思います」「ぼくも今でこそテレビや映画に出演させていただいてますが、基本の芝居というものをコクーン歌舞伎でつちかったという思いがあります」としみじみ明かした。
同席した串田監督が「歌舞伎俳優が先輩たちのやってきたことを壊そうとするのは、とても勇気のいること。想像できないプレッシャーもあったと思う」と中村をねぎらうと、中村は「弱いから強くなりたいし、乗り越えたい。人生ってやっぱり自分との戦いではないかなと思います。今後も役者人生を突き進んでいきたい」と意欲を新たにしていた。中村は11月には舞台復帰となる「松竹大歌舞伎」が控えている。(取材/岸田智)
『NEWシネマ歌舞伎 四谷怪談』は全国公開中