アメリカのスタジオが日本を舞台に描いたアニメ、膨大な日本文化をリサーチ
第30回東京国際映画祭
29日、日本を舞台にした少年の冒険物語をストップモーションアニメで描き出し、世界中で高い評価を受けた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』がTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催中の第30回東京国際映画祭特別招待作品として上映され、アニメーションスーパーバイザーのブラッド・シフ、スタジオ・ライカCOOのブラッド・ヴァルド、プロダクション・コンサルトの後藤太郎らが登壇、観客からの質問に答えた。
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魔法の三味線と折り紙を操る片目の少年が壮大な冒険を繰り広げるさまを描き出した本作を手がけたのは、『コララインとボタンの魔女 3D』などを手掛けたアメリカのアニメーションスタジオ、スタジオライカ。その映像世界は、アカデミー賞長編アニメーション部門、視覚効果部門にノミネートされたのをはじめ、世界各国の映画祭で高い評価を受けている。
舞台となった日本での上映を終えたヴァルドは「この場にいられてしあわせです。KUBOの母国で届けられて夢のようです」とあいさつ。続けてシフが「あたたかい歓迎をありがとうございます。この映画はスタッフみんなの日本へのラブレターとなっています。楽しんでいただけたらうれしいです」とコメント。さらに後藤が「職人主義的にこだわりを持って作れられたこの作品。頑張って作ったので、どう伝わったか皆さんにお聞きしたいです」と付け加えた。
この日は実際に撮影で使ったKUBOのパペットを持参したシフは、「身体の中にあるワイヤやホイールでポーズをキープできるようになっています。目も動かせるんですよ。そして腕の部分については、僕たちは小さなバンパイヤと呼んでいるんですが、スクリーンで見たパペットの動きは、アニメーターの命を吸い尽くして動かしていることなんですね」と解説。ヴァルドも「だから僕たちも50回以上にわたって映画を観てきたけど、毎回泣いてしまうんですね」と誇らしげな顔を見せた。
衣装、小道具はもとより、精神に至るまで、日本の文化の深い部分まで見事に描き出されている本作。本作でプロダクション・コンサルトを務めている後藤は、「自分に声がかかったときは、各部署ですでにリサーチが重ねられていた後でした。そもそもが日本に実際にあった話ではなくてファンタジーなので、事実から離れるさじ加減が難しくて。でもそこに関しては僕が入る前からたくさんのリサーチをしてきたんだなと思い、感心しました」と述懐。
そのリサーチについてシフは「日本文化については膨大なリサーチが行われてきましたが、特に美術部に関しては日本の木版画の影響を感じると思います。特に斎藤清の木版画は大きな影響を受けました。それからトラヴィス・ナイト監督は、黒澤明監督の作品の構図を参考にしましたし、インスピレーションを受けています」とその影響を明かした。
そんな本作の日本公開が待ちきれずに「北米からブルーレイを取り寄せてしまいました」と語る観客もいたが、それにはヴァルトも「日本公開が最後になったのは、最高の場所を最後にとっておいたからですよ」と返答し、会場は大盛り上がりとなった。(取材・文:壬生智裕)
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は11月18日より新宿バルト9ほかにて公開予定