「役者はパーツ」俳優・國村隼、国境を越えた活躍の秘訣
ベルギー=フランス=カナダ合作映画『KOKORO』で、フランス人のヒロインに優しく寄り添う元警官のダイスケを演じる國村隼が、過去の経験から合作映画におけるスタッフ・キャストに対する心構えについて語った。
ベルギー出身の女性監督ヴァンニャ・ダルカンタラが、日本のある小さな村を舞台に、心に深い傷を負った人々が再生していくさまを描いた人間ドラマ『KOKORO』。韓国映画『哭声/コクソン』撮影後に、本作の出演オファーを受けた國村だが、「デビュー2作目がハリウッドの『ブラック・レイン』で、その後は香港映画を5、6本やっていますから、僕の中では海外の映画人との仕事に違和感みたいなものはなく、割とフツウのこと」と自身のキャリアを振り返る。
そのためか、「国籍や言語は違っても、特別に『映画に関わる人種』が存在するかもと思えるぐらい、どこかでわかり合うことができる」と映画制作は世界の共通言語ともいえる発言も。そんな中、「役者として、現場でやることは変わらない」と断言できる理由は、日本とはバジェットが大きく違う『ブラック・レイン』の現場で学んだ“あること”に由来するという。それは「あくまでも役者は映像を完成させるためのパーツを作っているということ」。
ちなみに、隠岐島ロケを中心に行われた『KOKORO』の撮影は「ダルカンタラ監督の人柄そのままを反映したような、自然に水が流れるかのごとく穏やかな雰囲気」だったようで、その空気感は『オーバー・ザ・ブルースカイ』などで知られるカメラマン、ルーベン・インペンスによるステディカム撮影の効果などにより、仕上がった作品にも大きく反映されているといえる。
國村に、海外のスタッフ・キャストと上手くやっていく、いちばんの秘訣を聞いたところ、「現場の状況次第では、『YES』『NO』をハッキリ言うべき」と即答。穏やかな『KOKORO』の現場では、「その必要がまったくなかった」ようだが、その後に撮影に入った中国=香港合作の超大作『追捕 MANHUNT(原題)』(ジョン・ウー監督)においては、トラブルに対し、「ハッキリと言いました」とのこと。「自分たちの立場を守るためでもあるし、その方が制作もスムーズに進むし、作品のためにもなる」と語る彼の映画に対する真摯な態度は、日本のみならず、世界の監督からオファーが絶えない理由とも取れるだろう。(取材・文:くれい響)
映画『KOKORO』は渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中