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アカデミー賞有力作に名乗りをあげた『スリー・ビルボード』を町山智浩が解説!

第30回東京国際映画祭

鑑賞後の観客とトークで盛り上がった町山智浩
鑑賞後の観客とトークで盛り上がった町山智浩

 早くも本年度アカデミー賞最有力候補との呼び名も高い映画『スリー・ビルボード』が1日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催中の第30回東京国際映画祭特別招待作品として上映され、映画評論家の町山智浩が映画を鑑賞したばかりの観客と興奮した様子で同作について語り合った。

映画『スリー・ビルボード』海外版予告

 昨年は『ラ・ラ・ランド』が受賞し、アカデミー賞の行方を占ううえで近年注目が高まっているトロント国際映画祭の観客賞。今年は本命と言われたギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』をおさえて、ダークホースだった本作が観客賞を獲得。先日行われたベネチア国際映画祭でも脚本賞を獲得するなど、早くも本年度賞レースの大本命作品に躍り出し、注目を浴びている。そんな話題作が、全米公開前のタイミングでひとあし先に観られる機会とあって、この日のチケットは早くも完売となった。

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フランシス・マクドーマンドが主演『スリー・ビルボード』より - (C)2017 Twentieth Century Fox

 アメリカ・ミズーリ州のさびれた片田舎の大通り沿いに立つ三つの広告看板に、地元警察への批判メッセージを掲示することにした主人公のミルドレッド。それは7か月前に殺された娘の事件が未解決であることに業を煮やした上でのメッセージ広告であったが、それがやがて大きな波紋を巻き起こす……という物語だ。善と悪との境界線で揺れ動きながらも一筋縄ではいかない登場人物、逆転に次ぐ逆転で二転三転する物語など、全世界の演劇界を震撼(しんかん)し続ける鬼才マーティン・マクドナー監督の語り口を十分に堪能した観客からは自然と拍手がわき起こった。

 あらゆる暴力や圧力などにも屈せずに、怒りのエネルギーを放出させるタフな主人公ミルドレッドを演じるのはアカデミー賞に4度ノミネートされ、そのうち『ファーゴ』で主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンド。共演者にウディ・ハレルソンサム・ロックウェルケイレブ・ランドリー・ジョーンズなど実力派が集結している。とりわけ、暴力的な警官ディクソンを演じたサム・ロックウェルが強烈な印象を残したが、それについて町山は「本当に観ていてイライラしましたね」と笑いつつも、「実際の本人は、会うといい人なんですけど、『俺、日本で人気ないんだよね』とすごく気にしていたんで、この映画で人気が出るんじゃないですかね。彼はおそらくこれで賞をとるでしょうね。監督は彼のために映画を作ったようなものですから」とコメントする。

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 「今日は質問というよりも、ここが面白かった、あそこが面白かったと、みんなでコーヒーを飲むように楽しみましょう」という町山の提案により、映画を観たばかりの会場からは興奮した様子のコメントが続々と寄せられた。それらに対して町山は、本作を読み解くカギとして、『許されざる者』『赤い影』『プラトーン』『リダクテッド 真実の価値』『スポットライト 世紀のスクープ』『ウィンターズ・ボーン』『荒野の決闘』といった映画作品や、ジェームズ・M・ケインの「ミルドレッド・ピアス」という小説などの名前を挙げて、映画の裏側を解説する。

 さらに「この監督はかなり映画オタクなんですよ」と続けた町山は、「この作品の前に撮った『セブン・サイコパス』という映画では、北野武の『その男、凶暴につき』を引用してましたよね。そして語り方は『監督・ばんざい!』でした。すごいですね」とマクドナー監督の資質を紹介。重厚な映画の余韻を楽しむ観客と、濃厚なひとときを繰り広げた。(取材・文:壬生智裕)

映画『スリー・ビルボード』は2018年2月1日より全国公開

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