「仮面ライダー」、朝ドラ俳優を経た磯村勇斗が挑む新境地
NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で一躍ブレイクした磯村勇斗が、ドラマーにふんする映画『覆面系ノイズ』(11月25日公開)の裏側や、俳優としての今後の目標について語った。
静岡県出身で現在25歳になる磯村が、俳優を夢見たのは中学時代。自主映画を作ったのがきっかけだった。「タイトルは『ヌマヅの少女ハイジ』(笑)。15分程度のパロディー映画ですけど、自分で脚本を書いてスカートを履いてハイジを演じたんです。全校生徒の前で発表したとき、拍手をもらったことがうれしくて。演じることを仕事にできたら幸せだろうなと思いました」と明かす。以来、夢を膨らませて、高校時代は地元の劇団で芝居を学び、大学2年のときに俳優業に打ち込むため中退。バイトをしながら小劇場の舞台を中心に劇団を転々とし、現在の事務所に所属する演出家の舞台に出演した縁から芸能界に入った。
それから4年の間に、「仮面ライダーゴースト」(2015・テレビ朝日系)のアラン/仮面ライダーネクロム役に抜擢され、NHKの朝ドラ「ひよっこ」(2017)ではヒロインの恋人役を射止めた。近年は「仮面ライダー」などの特撮ヒーローものを経て朝ドラに出演してブレイクするというのが人気俳優になる定番コース。その登竜門をくぐったばかりの磯村に今の気持ちを聞いてみると、「何も変わらないし、何も意識していません。むしろ周りからは『いい気になったら終わりだ』って厳しく言われています。いただいた役に対して誠実に取り組んで、幅広いキャラクターに挑戦したい」と真摯に語る。
新作映画『覆面系ノイズ』では人気覆面バンドのドラマーを演じている。磯村にとって初めての少女マンガ原作で、初めてのドラム演奏、初めての和歌山弁など初尽くしだった。「朝ドラでは大先輩たちの中で、今回の映画では同世代の俳優との共演で、それらを通して自分の弱みがわかりました。芝居はもちろん、立ち姿や現場の雰囲気を読んで動くこと、キャストとのやり取りなどまだまだ足りないことばかりです」と旺盛な向上心をのぞかせる。「ライバルは?」と尋ねると、「僕はライバルを作るよりは一緒に共演したいと思われるように頑張りたい。できれば菅田将暉さんとご一緒したいですね。NHKですれ違ったんですけど、『あっ、菅田くんだ』って一ファンとして興奮しました」と微笑む。「仮面ライダー」出身、朝ドラ経由の気鋭の若手同士で、共演を果たす日もそう遠くないことだろう。(取材・文:前田かおり)