大林宣彦、「反戦映画を作っているわけじゃない」外国人記者に戦争観
映画監督の大林宣彦が1日、都内の公益社団法人・日本外国特派員協会で最新作『花筐/HANAGATAMI』の記者会見を行った。檀一雄の小説「花筐」に基づき、1941年の佐賀県唐津市を舞台に戦禍を生きた若者たちの青春群像を描く本作を語る中、大林監督は自身の戦争観を熱弁。「わたしは反戦映画を作っているんじゃない。ただ戦争が嫌いなだけなんです」と話して笑顔を見せた。
長編デビュー作『HOUSE ハウス』(1977)より前に書き上げていたという幻の脚本を映画化。窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、常盤貴子、矢作穂香らを迎え、叔母(常盤)のいる佐賀・唐津に移り住み、友人らと勇気を試す冒険に熱中するなど、青春真っ盛りの17歳の俊彦(窪塚)たちに忍び寄る戦争の影、その中で交錯する若者たちの心情を描く。
会見では外国人記者から「戦争を描くなら、なぜもっとリアルに戦争そのものを描かないのか」との質問も飛んだが、大林監督は「リアルに戦争を再現しても実際の戦争には勝てないと思っています。画面いっぱいに広がる焼夷弾の落下のシーンを描いても隣で観ているわたしの妻なんかは、『こんなもんじゃない』って。どんなにCGが発展しても戦争をリアルに再現するのは無理だと思っているんです」とその理由を説明。
戦争を描く際も「あえて虚構の世界で描こうと思っています」と述べ、「虚構というのは嘘。この世界で嘘といえばそれは“平和”なんです。映像は嘘のような美しさで作ってあります。嘘も作り続ければ本当の世界になるんじゃないかという願いを込めて」と自身のスタンスを切々と語った。
約40年前から構想を練っていたという本作だが、「戦争を知らない世代が戦争の匂いを感じるような、とっても不幸で危ない世界になってきました。今こそこの映画を作れと言われているような気がしたんです」と着手した理由も明かし、「40年前とは脚本もすっかり書き換えました。時代がこの映画を(自分の方に)寄せてくれたと思っています」と現代の揺れる世界情勢にも警鐘を鳴らしていた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『花筐/HANAGATAMI』は12月16日より有楽町スバル座ほか全国順次公開