ダイアン・クルーガー、ドイツ映画への出演は念願!
演技派女優ダイアン・クルーガーが、今年のカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した話題作『女は二度決断する』(2018年4月 日本公開)について、12月5日(現地時間)ニューヨークのAOL開催のイベントでファティ・アキン監督と共に語った。
本作は、ドイツのハンブルクを舞台に、愛する夫と息子を突然失った主人公の苦難の日々を描いた人間ドラマ。麻薬の売人から更生したトルコ移民のヌーリ(ヌーマン・アチャル)は、ドイツ人のカティヤ(ダイアン)と結婚。息子と3人でトルコ人コミュニティーで幸せに暮らしていたが、ある日、爆発事件に巻き込まれてしまう。愛する家族をテロによって失ったカティヤは、犯人に激しい憎悪を抱き、自らの手で復讐を果たそうと決意するが……。『そして、私たちは愛に帰る』などのアキン監督がメガホンを取った。
今作のコンセプトについて、アキン監督は「2012年頃、ドイツでネオナチが(トルコ系やギリシア系の移民男性を狙った)爆破事件を起こして死者を出した事件があったんだ。僕はトルコ系ドイツ人だから、そのルックスからターゲットになる可能性もあると思い、その事件に思い悩まされたよ。その怒りをぶつけるように、今作の脚本を書き始めたんだ。執筆中の初期段階で、ダイアンを配役することを念頭に置いていたよ」と説明。続けて、ダイアンが「カンヌ国際映画祭に参加中の夜のビーチでファティと語り合ったの。わたしは彼の作品が好きで、大ファンだったわ。これまで一度もドイツでドイツ語を使って撮影したことがなかったから、彼には『何か作品があったら、一緒に仕事をしたいと思っている』と伝えていたのよ」と明かした。その後本作への出演が決まり、念願だった母国ドイツでの母国語での撮影が実現した。
本作で重厚な演技を披露したダイアンだが、感情的にも大変な役柄であったカティヤの役作りについては、「(本作は)わたしだけでなく、ファティにとっても大変な作品だったと思うわ。ドイツに行く前にアメリカで、テロ事件や殺人の犠牲者となった自助グループ(何らかの障害や問題、悩みを抱えた人や家族が相互に支え合い、問題を克服していくための小集団)と話したりして、かなり準備をしたの。彼らと話していくうちに、彼らの言葉では表せないほどの苦しみや(その責任の)重みを引き受けた感じがしたわ。だから撮影に入った時には、すでに感情の準備ができていたのよ」と入念に役作りしたことを語った。
今作のベースとなるドイツでの爆破事件やその裁判に関して、「ネオナチや右翼団体がヨーロッパ中で暴動を起こしていたのは知っていたけれど、ドイツに住んでいなかったこともあって、今作のベースとなった事件の裁判に関して当時は知らなかったの」というダイアン。「でも、今作の爆破事件は、カティヤの心の旅路の動機になっていて、ネオナチ、ジハードの戦士、ラスベガスで起きたクレイジーな射撃手などの(事件を起こした)動機は問題ではないの。今作は家族を失った悲痛を描いているのよ。人種が異なるというリアリティーに直面しながらも、実際にテロ事件などが起きても、(同様な事件があちこちで起きていることで)わたしたちの感覚が麻痺していることの方が問題だと思うわ」と指摘した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)