「僕の生きてきたすべて」岩田剛典、緊迫の撮影現場を公開
「僕の生きてきたすべてを。魂を込めて臨んでいますーー」。芥川賞作家・中村文則の同名小説を映画化する『去年の冬、きみと別れ』(3月10日公開)で単独映画初主演を果たすEXILE / 三代目 J Soul Brothers のパフォーマー、岩田剛典が、2017年8月に行われた本作の撮影中に作品に懸ける熱い思いを語った。
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高畑充希とダブル主演を務めたラブストーリー『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2016)が興行収入約22億円の大ヒット。料理上手で植物オタクの王子様的キャラクターが人気を博した本作から一転、『イキガミ』『脳男』などの瀧本智行監督とタッグを組んだ『去年の冬、きみと別れ』ではダークな役どころに挑戦。猟奇殺人事件の容疑者で天才カメラマンの木原坂(斎藤工)を追ううちに衝撃的な運命をたどるルポライター・耶雲恭介を、持ち前のきらきらとした笑顔を封印し、熱演している。
2017年8月11日。猛暑のスタジオでは、事件の調査に没頭する耶雲が婚約者の百合子(山本美月)さえも踏み込めない領域にはまっていくことを暗示するシーンの撮影が行われていた。パソコンに向かう耶雲に婚約者の百合子が背後から「ご飯、できたよ」と声をかけるも耶雲は手を止めず、「後にする」とつれない返事。別のシーンでも、百合子が心配するかのように耶雲の肩に手をかけるが彼は振り返ることなく、百合子は顔を曇らせて「おやすみ……」と去っていく。
岩田は本作の脚本に魅せられるのと同時に「自分の持っている引き出しはすべて、惜しみなく出さないと表現しきれない」といまだかつてないプレッシャーを抱えることになった。「正直、他の仕事を挟みたくないと思うくらい、のめりこんでいるというか没頭していて、撮休の日も何もせずにずっと作品のことを考えています。監督がそういう方なので、僕もそういう気持ちで向き合わなければと。例えば監督から『今夜は寝ないよね?』みたいな前フリがきても、僕も気合いが入っているので『おお、そう言ってくるなら、寝ないぞ!』と負けん気を出したり(笑)。そういう意地の張り合いを重ねる中で自然と、目が充血するほど事件にのめり込む耶雲の執念のようなものを表現していった気がします」。
本作で岩田は初めてメガネをかけたキャラクターを演じているが、メガネをかけることでより芝居の難易度は増し、瀧本監督はワンシーンごとに目線、仕草、セリフまわしなどの一つ一つに対して緻密なディレクションを出していった。岩田はそんな監督の要望に応えるために自分なりの芝居をいくつか用意して現場に入り、「声のトーン一つ、所作一つ」に対して試行錯誤しながら演じていったという。
また、耶雲を翻弄する事件の容疑者・木原坂役の斎藤や、耶雲の担当編集者・小林役の北村一輝の芝居に合わせ、声のトーンを落としているのも印象的だ。「とにかく落ち着いた芝居を心掛けたというか、実年齢よりも少し上ぐらいの心持ちで演じていたと思います」。
劇中はシリアス、緊迫したシーンが続くが、撮影の合間に斎藤、北村と飲みに行ったことが助けになったそう。「結局、5軒ぐらいはしごしてベロベロになりながら、朝4時半くらいにダーツバーに行って、北村さんの負けず嫌いがわかりました。工さんばかりが勝つので『勝つまで帰らねえぞ』みたいな(笑)。勝ってから帰られましたけど(笑)」。
岩田は試練が続いた撮影現場を「ずーっとトンネルの中に入っている気分」と表しているが、そのトンネルを抜けた先には、アッと驚く岩田の新境地がスクリーンで観られる。(取材・文:編集部 石井百合子)