北原里英、傷だらけの主演映画で見せた「アイドル卒業」への決意
4月14日にNGT48の卒業コンサートを控える北原里英が、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の鬼才・白石和彌監督と初タッグを組んだ主演映画『サニー/32』で、生傷だらけの“戦う”女性を熱演している。ピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦らツワモノたちに囲まれながら、孤軍奮闘するその佇まいは、もはやアイドルではなく、役を生きる一人の女優の顔だ。「指1本で崖っぷちを生き残ってきた」という北原が、AKB48グループ10年間の中で得た、その生きざまについて語った。
本作は、白石監督と高橋泉が書き下ろしたオリジナル脚本を北原主演で映画化したサスペンス。新潟のある田舎町、内気な中学校教師・藤井赤理(北原)は、24歳の誕生日を迎えたその日、2人組の男、柏原(ピエール)と小田(リリー)に雪深い山麓の廃屋へと連れ去られる。そして彼らは赤理を“サニー”と呼んだ……。「犯罪史上、最も可愛い殺人犯」として神格化された通称“サニー”をめぐり狂気の群像劇が暴走する。
10年間のアイドル生活最後の作品で北原は、誰もが尻込みしそうな役を買って出た。「ラジオ番組で秋元(康)先生に『北原の主演映画を撮る』とサプライズ発表されたのが3年前。白石監督の『凶悪』が大好きで、秋元先生に“『凶悪』のような作品に出たい”と話したことにより夢のタッグが実現して。卒業を決意した10周年の年に公開が決まり、女優を目指すわたしにとってすごく運命を感じた」と瞳を輝かせる。
「この映画は、わたしが女優になるために、手土産として持って行くもの」だと語る北原。これまで自分のキャリアよりも、メンバーの輝きを優先してきた彼女にしては、珍しく自己主張にあふれた発言。「こんなチャンス、今までなかったし、この先もあるかどうかわからない。この映画を持って卒業できるなんて、本当に幸せ」と語るその表情には、女優として生きていく覚悟と闘志がみなぎっている。
そもそも北原は、AKB48に入る以前から女優を志し、さまざまなオーディションを受けてきた。だが、連戦連敗が続き、唯一振り向いてくれたのがAKB48だった。気付けば10年。「AKB48の中で、わたしが一番面白い歩き方をしてきた」と述懐する。
自己犠牲を惜しまない性格ゆえに、一見、遠回りしているように見えるが、ほかのメンバーができなかったさまざま経験が、女優を目指していた北原に、今、強力な栄養素となって全て還元されているような気がする。「メンバーやスタッフを大切に思う気持ちは誰にも負けない自信がある。次は自分をもっと大事にして、1人でも活動できる自分らしさを伸ばして生きたい」。この発言からも、過去のアップダウン人生は、間違いなく北原を成長させたことがわかる。
「『サニー/32』は、誰にも渡さない。わたしの人生を代表する作品。今のところ棺桶まで持っていくつもりだけれど、でも、次はこの作品を超えるものにしないとダメですよね」と自我に目覚めた北原の新たな可能性に期待したい。(取材・文:坂田正樹)
映画『サニー/32』は2月17日より全国公開(新潟・長岡にて先行上映中)