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日本初撮影!TBS「世界遺産」驚きの裏側

2,000年もの間続くメイマンドの洞窟住居での生活に密着!
2,000年もの間続くメイマンドの洞窟住居での生活に密着!

 TBS系で放送中のドキュメンタリー番組「世界遺産」(毎週日曜午後6時~6時30分放送)。アグレッシブな取材力と最新技術を駆使した美しい映像で好評を博している同番組は、2015年に世界遺産に登録されたイランの文化遺産「メイマンドの 文化的景観」の日本初撮影に成功し、その模様を2月18日に放送する。これに先立ち、プロデューサーの堤慶太氏とディレクターの石渡哲也氏が、メイマンドの撮影秘話をはじめ世界遺産の知られざる裏事情を明かした。

【写真】洞窟住居の中はこんな感じ!

洞窟住居で2,000年続く遊牧民の生活

世界遺産
10年以上関わっているという石渡哲也ディレクター

 日本のテレビで初撮影となるメイマンドは、イラン高原の荒涼とした岩山が連なる標高2,300メートルの高地。35世帯、80人まで減少した遊牧民たちは、春は草原、夏は山の放牧地帯、厳寒の冬は崖地に掘られた“洞窟住居”で暮らし、2,000年以上続くこの生活を守り続けているという。同番組では、日本のテレビクルーとして初めて現地に入り、自分たちのスタイルを貫く遊牧民たちの生活を追いかける。

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 昨年の11月初旬から約1か月間、6人編成のクルー(ディレクター、カメラマン、ビデオエンジニア、コーディネーター2名、ドライバー)で 撮影を敢行。住人たちと同じ洞窟で寝食を体験したという石渡氏は、「日本と同じように靴を脱いで絨毯に上がる習慣なのですが、とにかくダニが多くて2~3日すると体が痒くなってきました。電気は20年前に引いたらしいですが、頻繁に停電するので機材を扱うわれわれにとってはリスクが高かった」と苦笑い。

 洞窟の中にはトイレも風呂もない。「外に丸い石囲いみたいなものがあり、それが昔ながらのトイレでした 。体の汚れは近くに流れる川の水で体を拭くしかない。ただ、川は季節によって水量が変わるので、井戸を掘ったり、山の水を溜めて水路を作って村に流したりして、水を確保しているようです」。また、番組中、山羊の肉を使った保存食を作るシーンが登場するが、煮込んでいる途中段階で試食させてもらったという石渡氏。「おじさんが適当に塩を振りかけていたのに、絶妙の塩梅ですごく美味しかったですね。場所柄、仕方のないことですが、保存食として固めてしまうのがもったいないほど」と絶賛していた。

世界遺産は永遠ではない

世界遺産
世界遺産登録に至るまでの過程を明かす堤慶太プロデューサー

 そもそも同番組は、1996年、放送開始と同時に「ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)」とパートナーシップを結び、年に一度行われる世界遺産の国際会議にオブザーバーと参加している。これについて堤氏は、「ユネスコで『世界遺産条約』というものを作ったんですが、世界遺産の対象となるためには、まずそれに加盟しなければなりません。そして、加盟国から選ばれた21か国が『世界遺産委員会』として年に1度、新しい世界遺産を決める国際会議を開きます。わたしたちはオブザーバーとして、その会議を傍聴しているのですが、メイマンドもそこで洞窟の画像を拝見し、『これは面白い、ぜひ撮影したい!』と思ったのが取材のきっかけでした」。

 また、世界遺産委員会では危機にさらされている世界遺産について、「危機遺産」に指定するための審議も行われる。これは、世界遺産としての価値が損なわれる恐れがあることへの警告を意味する 。「世界遺産に登録されるとその価値を守り続ける責務が生まれます。何年かおきに、ユネスコへの報告義務があり、自然遺産、文化遺産などそれぞれの専門家集団によって評価されます。内乱で壊されたり、景観を壊す建物を建てたり、利便性を重視して橋をかけたり、危機遺産に指定される理由はさまざまです 」(堤氏)。

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世界遺産
メイマンドの遊牧民たち。いまではわずか80人に減少しているという

 今回のメイマンドにおいても、石渡氏はこう証言する。「例えば、教育問題ですが、子供を町の学校へ行かせるために母親と子供は町に暮らし、おじいさん、おばあさん、そして旦那さんが洞窟の村で遊牧民の生活を守っている。勝手に新しい洞窟を作ってはいけないし、人が住まなくなった洞窟が傷んで陥没してもいけないので、『ホテル』と銘打って洞窟の中をケアしたり、われわれ取材陣を宿泊させたり、世界遺産を守り続けるためにいろいろ工夫しているわけです」。

撮影を成功させる秘訣

 一見すると華やかな世界遺産、その一方で危機遺産にならないためには涙ぐましい努力が必要なのだ。そんな裏舞台を直に目撃したり、誰も足を踏み入れない辺境の地を訪れたり、撮影クルー自体も、“危機”に遭遇したことはないのだろうか? これに対して堤氏は「戦争取材に行くわけではないので基本的に治安の悪いところには行かない方針です」と安全最優先を強調。それでも、現場に赴き結果的に命がけになってしまうことはあるようで、石渡氏は「韓国の済州島で溶岩洞窟に入る際、雨の中、命綱無しのロープ1本で25メートルを下りたときは危なかった。シチリア島のエトナ山で防毒マスクを付けずに行ったら、噴煙を吸い込んで窒息しそうになったことも」と述懐する。

世界遺産
3月25日に放送される世界初撮影第2弾の「タイ国立公園」全景

 海外でのドキュメンタリーを撮るために必要なスキルについて、「強運と、危機を察知する嗅覚、それから交渉をスムーズにする愛想笑いかな」とベテランらしい回答で自信をのぞかせる石渡氏。

 3月25日には“日本初撮影”第2弾として絶滅が危惧されているチンパンジーが生息する「タイ国立公園」を放送 。研究者以外の立ち入りが一切禁止されたエリアへの取材が、特別に許可されたという。(取材・文:坂田正樹)

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