福士蒼汰「一生満足しない」ストイックな思考の癖明かす
さわやかな若手イケメン俳優というパブリックイメージを持つ福士蒼汰だが、これまでのインタビューや、バラエティー番組などで見せる“癖”がなかなかユニークだ。先日行われた主演映画『曇天に笑う』完成披露プレミアイベントでは、撮影中、左足の小指にヒビが入る怪我をしたものの「大した怪我もなく」と平然と言ってのけた。
メガホンを取った本広克行監督は「かなり重症でしょ」と突っ込みを入れていたが、本人にとっては「本当にたいしたことがない」という認識なのだろう。映画の撮影はもちろん、物事に取り組む際の目的意識が高く感じられる。『曇天に笑う』でも、福士はほぼノースタントでアクションに臨み、スクリーンいっぱいにダイナミックな殺陣を披露している。妥協をしないのだ。そのあたりを本人に問いかけると「自分でも認識しています」と語る。
続けて「一生満足しないのだろうなと思います。ずっと満足しないまま、夢が叶ったら次の夢を見つける。いつまでも満たされないのでしょうね」と自嘲気味に笑う。そして「でも、そんな自分が好きなのだと思います」とつぶやいた。
なぜ満足しないのか。それは同世代のライバルがひしめく俳優の世界で生き残るための“危機感”から生じるストイックさなのだろうかと問うと「周りはそんなに気にならないです」とあっさり。「素直にみんな自分よりもすごいなと思って作品を観ています。ある意味で『自分にはできない』とネガティブな思考になるのですが、そこでまた目標が生まれます。結局はポジティブになれるんです」。
「なぜ満足しないのか」という理由になかなかたどり着けないでいると、福士は「そういう“癖”なのかもしれません」と語る。「ある意味において、これまでの作品でも満足したことはありません。もちろん、監督からOKをいただいていますし、その時点において自分のできるベストを尽くしてはいます。でも翌日、1か月後、1年後など時間が経って改めて振り返ると『もっとできたはず』と思ってしまうのです」。
一種の完璧主義なのかと思われるが「完璧になりたいという思いはありますが、それ以上に、常になにかを求めていたいと思っています。止まっているのが嫌なのです」と自己を分析する。一方で、他者に対しては「特に求めないです。逆に『完璧だな』と思う人が現れると目標にしたくなります」というからおもしろい。
こうした“癖”を持った俳優・福士蒼汰の行きつく先はどこなのだろうか。「アフリカとか大自然の中にいるかもしれません。昔からバックパッカーとして世界一周したいという気持ちがあったのですが、ずっと上を向いて進んでいったら、一周して人間が生まれたところに戻るというような……」。
「ポジティブ」や「向上心」という言葉は、目標とする人間像として挙げられることが多いが、福士に関しては「こうありたい」という匂いがまったく漂ってこない。ある意味、天然の思考、まさに“癖”なのかもしれない。(取材・文:磯部正和)
映画『曇天に笑う』は3月21日より全国公開