浅野忠信＆椎名桔平、ヤクザ役ジャレッド・レトーとの共演を振り返る！
映画『ブレードランナー 2049』『ダラス・バイヤーズクラブ』などのオスカー俳優ジャレッド・レトーを主演に迎え、日本の裏社会に生きる男たちを描いたNetflix映画『アウトサイダー』で主要キャストを務めた浅野忠信と椎名桔平が、本作の撮影を通して感じたことなどを語り合った。
Netflixがオリジナル映画として初めてオール日本ロケを敢行した本作は、戦後の大阪を舞台に、元米兵ニック（ジャレッド）が刑務所でヤクザの清と出会ったことをきっかけに、任侠の世界を知り、生きる意味や誇りを取り戻していくさまを描く。『マイティ・ソー』シリーズなどすでに世界で活躍している浅野が清役、『ダーク（原題） / Darc』（2016）に続いてのハリウッド作品出演となった椎名が清の兄弟分にしてニックの存在を疎ましく思うオロチ役を務めている。
浅野は脚本を初めて読んだときのことをこう振り返る。「僕にはアメリカ人の血が入っていて、うちのおじいちゃんが日本に来て、うちのおばあちゃんに出会ったわけですけど、やっぱりその時代にそういうことってあるんですよね。うちの場合は、男と女が出会ったわけですけど、きっと男同士の友情もあったはずですから。そういうイメージをふくらませて撮影に臨んでいたので、とても興味深い話だと思いました」。浅野が言うように、ニックと清の築く絆が物語のキーになっていく。そのニックを演じたジャレッドは、ハリウッドでも徹底した役づくりで知られているが、実際に共演してみてどうだったのだろうか。「彼はこの役に関しては悩んでいて、やっぱ慣れないんだよねっていうことを正直に話していました。激しい役をやることが多かったので、自分から攻めていく役はできるんだけど、受け身の役はあんまりやったことがないんだよねって」。
一方、「拙い英語でも自分のほうから声をかけるとか、疲れていても笑顔で接するとか、そういう努力をしなきゃいけないな、と思っていました」と、海外キャスト＆スタッフへの心掛けを教えてくれた椎名。それは敵対する役どころだったジャレッドに対しても同じで、「役なのか、本人なのか、わからないけれど、わりと静かだったので。でもたまに、休憩時間に横にいたら、ちょっとしゃべってみようかなと思って」と積極的に交流を図っていたそう。そもそも、ハリウッド進出作となった『ダーク（原題）』で通訳も含めて日本人スタッフのいないカナダでの撮影を「武者修行のよう」と語っていた椎名だが、そこで感じたことが今作へのモチベーションにもつながったようだ。「『ダーク（原題）』では渡辺哲さんも一緒で。そういうベテランの方が単独で遠い国に行って、バーッと仕事して、『では、また！』とかって帰っていくのをみたら、いいなと。年を取って、若いころとは勝手が違うようになっても、いろんな国にちょっと行って、お仕事できるというのは、素敵なことなんじゃないか、ってその時思ったんです。だから僕も、地道にちょっとずつでもいいから、浅野くんが教えてくれた“英語がうまくなる本”を読んで（笑）、がんばらなきゃなーって」。
「浅野くんの英語っていうのは日本語で話すみたいな英語を話すから、違和感ないというか。もう、英語ができる高倉健さんみたいだって。日本が誇る男って感じですよね」という椎名からの称賛の言葉に、「うれしいです。がんばらないといけないですね」と照れを見せる浅野。本作では、穏やかな素顔とは裏腹に、極道の男を演じきっているが、メガホンを取ったデンマーク人のマーチン・サントフリート監督（『ヒトラーの忘れ物』）からは「清はそんなやつじゃないと、もっと冷酷に、冷酷に」と言われたそうで、最も苦戦したという初挑戦の切腹シーンについても「僕は『うぉおおお』とかって、清のことを考えずに、ついリアルな感じでやってしまって、監督からは僕の中の清はこんなやつじゃないってダメ出しされてしまって（笑）」と明かしていた。
本作はNetflixで世界のおよそ190の国と地域で同時配信される。「来週インドに行ったら、『あ、先週観た映画の人だ！』とかっていうのもあるかもしれないということですもんね」と椎名は笑顔を見せつつ、「純粋に映画を好きな人が集まっている。それはどこも同じなんですけど、多様性を感じながら、いろんな国の正しいやり方みたいなのがあるわけじゃないですか。どれが一番正しいやり方なんだというのは、とっぱらって。こう集まって一つのものをつくるっていう、醍醐味を感じました。貴重な経験になりました」と本作の撮影を振り返っていた。（編集部・石神恵美子）
映画『アウトサイダー』はNetflixにて配信中