『リメンバー・ミー』ピクサー初のミュージカルになる可能性あった?
ピクサーとディズニーの長編映画の違いとして、ミュージカルであるか否かが挙げられることがある。1年に1度だけ亡くなった家族たちと会えるというメキシコの祝祭メキシコの祝祭「死者の日」を舞台に、禁じられながらもミュージシャンを夢見る少年を主人公にしたエモーショナルな新作『リメンバー・ミー』は、ピクサー史上最も音楽が大きな役割を果たしている作品だが、同スタジオ初のミュージカルとなる可能性もあったのだろうか? 米カリフォルニアにあるピクサー・アニメーション・スタジオで共同監督のエイドリアン・モリーナに聞いた。
本作の核となる楽曲「リメンバー・ミー」を手掛けたのは、その後ディズニー映画『アナと雪の女王』の「Let It Go」でアカデミー賞歌曲賞を受賞することになるロバート&クリステン・アンダーソン=ロペス夫妻で(※ロペス夫妻は「リメンバー・ミー」で2度目のオスカーを受賞)、モリーナ監督は制作初期段階では「あまりに音楽的だったので、全体を、突然歌い出すようなミュージカルにするというアイデアもいくつか話し合いました」と打ち明ける。
しかし、リサーチを重ね、ストーリーを深めていく段階で方向性が変わっていった。「現実の世界でも、音楽は記憶と密接に関係していて、愛する人々に自分を表現する方法としても認識されています。特にメキシコ文化では、音楽は人々が集まるところで普通に使われているんです。皆で一緒に音楽を演奏することを通して、まるで話をするかのようで。(ミュージカルの世界でなくとも)メキシコや現実の世界において、音楽はとても美しい使われ方をしている、そう気づきました。だから制作過程の真ん中あたりで、ミュージカルにするのではなく、そういうふうに音楽を使うことに決めたんです」。
本作には「リメンバー・ミー」はもちろんのこと、「ウン・ポコ・ロコ」「音楽はいつまでも」といったメキシコ的な楽曲が非常に効果的にストーリーに組み込まれており、ミュージカル好きもそうでない人もきっと胸を打たれるはず。モリーナ監督は「それは何も、いつか本作がミュージカルになったらすてきなものにはならない、ということじゃありません。ミュージカル化は素晴らしいアイデアだと思います」と語るも、「でもこの映画では、音楽は現実にあるのと同じようなものにしたかったんです」と本作に込めた思いを明かした。(編集部・市川遥)
映画『リメンバー・ミー』は公開中