コムアイ、知名度に追いつかない中身に周囲の目を捨てる!
音楽ユニット・水曜日のカンパネラのボーカルとしてアーティスト活動を行う一方で、テレビドラマで主演を務めたり、ワイドショーでコメンテーターを行ったりと、幅広いジャンルで活躍しているコムアイ。そんな彼女の新たな一手が、スクリーンデビューとなった『猫は抱くもの』(6月23日公開)でのキイロという猫の役だ。エキセントリックな表現方法で、人気急上昇中のコムアイだが、取り巻く環境の変化によってある葛藤が生まれたという。
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2013年に水曜日のカンパネラを結成して以来、独特な存在感とパフォーマンスで、多くのメディアから“注目の人物”としてフィーチャーされてきたコムアイ。活躍の場は広がり、本作では犬童一心監督のもと、沢尻エリカや吉沢亮らと共演し、女優として映画デビューも果たした。
迷い猫のキイロは、吉沢演じるロシアンブルーの猫・良男に影響を与えていく、重要な擬人化猫の役。犬童監督とは面識はなかったというが「お手紙をいただいたのですが、監督の作品は好きでしたし、物語全体を縫っていくような俯瞰(ふかん)して見ている役。しかも猫というのは面白そうだなと思った」とオファーを受けた理由を語ると、共演者の銀杏BOYZ・峯田和伸のように、アーティストが俳優業を行うことについて「音楽活動では無意識のうちに出しそびれてしまっている自分自身の違う面を表現でき、しかもそれを自分名義でも使える可能性がある」と相乗効果を述べる。
続けて「例えば、わたしのなかにセクシーという要素があったとしても、コムアイ名義でそれをやってしまうのは違うのかなと自然とセーブしてしまっている可能性があります。でも役柄としてそういうジャンルのものがあれば、我慢せずにやれる。しかもそれがうまくはまれば、アーティスト活動しているとき、新たな表現になるかもしれない」と具体例を出して説明する。
さらに「本作のキイロという役は、『えっ』とか『ふんふん』といった相づちなどギリギリぶりっこじゃないようなラインを見せている。それはいままでわたしのなかにあまりなかったチャンネルで、ライブとかでも出していいのかなと思った」と語る。
常に自身の表現に向き合っているというコムアイ。そこにはパブリックイメージを意識した緻密な戦略があるようにも思われるが「以前はどう見られるのかということは気にしていましたが、1年ぐらい前からはまったく気にしないようになりました」と心境の変化があったことを明かす。そこには、急激にメディア等で取り上げられ、露出が増えたことによる認知度の上昇が影響しているという。
「自分がやりたいと思ったことを必死にやっていたつもりですが、急に多くの人に知ってもらえるようになって、自然とその人たちの意見や期待に応えようとしてしまっている自分が見えたんです。自分のやりたいことよりも、わたしに期待している人たちのためになにかをやっているような……」
こうした状況に危機感を抱いたコムアイは「どう見られるかより、もっと自身をしっかり肥やすことに集中しよう」と心に決めた。「評判と中身が追いついていないと感じてしまい、知名度が上がるにつれて、不安な気持ちも大きくなってしまっていたんです」と1年前の状況を語ると「いまは自分のやりたいこと、それがしっかりできるように実力を蓄えること」にまい進しているという。
「俳優業にはずっと興味がありましたし、演じるという表現も魅力的」と前向きに捉えていることを明かしたコムアイ。一方で「お芝居をするとき、自分を空っぽにしてやるには、自我が強いのかなと思うので、これからも自分のパーソナルなものを土台に面白いと思えるようなお話があればやっていきたい」と意欲を見せていた。(取材・文・撮影:磯部正和)