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山田洋次監督、戦争におう世界に…舞台「母と暮せば」上演に寄せる思い

『母と暮せば』舞台版の上演に思いを明かした山田洋次監督
『母と暮せば』舞台版の上演に思いを明かした山田洋次監督

 吉永小百合二宮和也出演の映画『母と暮せば』(2015)のメガホンをとった山田洋次監督が16日、新宿の紀伊國屋ホールで行われたこまつ座「戦後“命”の三部作」完成制作発表会見に出席し、自身が命名した「戦後“命”の三部作」への思いを語った。

映画版『母と暮らせば』【画像】

 作家・劇作家の井上ひさしさんが座付き作家として立ち上げたこまつ座の代表作「父と暮せば」と、井上さんの構想を受け継いだ山田監督が、長崎で被爆した母と亡き息子の幽霊との交流を描き出したファンタジー『母と暮せば』。この対となる2作品に加え、映画公開当時に上演していた舞台「木の上の軍隊」を合わせ、山田監督の命名したのが「戦後“命”の三部作」だ。舞台版『母と暮せば』は、母役に富田靖子、息子役に松下洸平というキャスティング、栗山民也の演出、そして山田監督の監修によって、この秋から上演される。

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 「死者が亡霊となって現れて、会話を交わすという物語は昔からたくさん生まれてきました。井上さんは『父と暮せば』という作品で、その死者の亡霊を、原爆の地獄の中で焼き殺されたお父さん、そして生者を娘にして、父と娘のドラマを作り上げました」と切り出した山田監督は、「それを二人芝居という難しい形で。しかも重い主題でありながら、軽くて、ユーモアを交えながら楽しく観ることができる。こういう作品を書くことができるのは井上さんが天才だから。井上さんにしかできないことだと感心していました」と述懐した。

 そのうえで、舞台版の『母と暮せば』について「(映画と違い)二人芝居で、井上さんに負けないくらいの台本を書くのは大変なことだと思いますが、畑澤聖悟さんという優れた劇作家が引き受けてくれたと聞いて安心しています」とコメント。さらに「『母と暮らば』も含め、三部作が繰り返し上演されるということは、今の戦争のにおいがプンプンする世界には大事だろうと。きっと観客も熱烈に迎え入れてくれるに違いない」と付け加えた。

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山田洋次監督と、「父と暮せば」に出演する山崎一、伊勢佳世、演出の鵜山仁

 さらに「井上さんがこの戯曲(『父と暮せば』)を書くにあたって、広島に何度も通って。実際に被爆から生き残った人の言葉を書き記したそうです。コピーではだめだということで、几帳面な字でノートに書き写したそうです」と続けた山田監督は、「僕も長崎の原爆についての資料館に残された資料を見ている時に、井上さんのような気持ちになってきました。さすがに全部を書き写すことはできなかったですが、大事なところだけでも書き写そうと思いました」と述懐。

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 また「もしこの人たちが生きていたら、どんな人生を歩んだんだろうと。そういうことを亡くなった人の記録の中からしきりに思ったものです」と付け加えた山田監督は。「そしてそれはきっと亡霊を演じてきたたくさんの俳優たちもそうだったと思う。もし俺が元気で、飯を食ったり、けんかをしたりすることができたのなら、生きていることはどんなに素敵なことだろうと。彼らはきっとそういうことを想像しながら芝居をしたのだろうと。記録を書き写しながら、そういったことを思いました」と思いをはせた。

 そしてこの日は、6月から上演予定の舞台「父と暮せば」に出演する山崎一伊勢佳世、演出の鵜山仁、こまつ座代表・井上麻矢、そしてこまつ座の作品を数多く上演してきた紀伊国屋書店の高井昌史代表取締役会長兼社長も来場。井上代表は「この混とんとした時代に、消耗品ではない演劇をこれからもひとつずつ作っていきたい」と決意を語った。

こまつ座舞台「父と暮せば」は6月5日から17日まで六本木の俳優座劇場にて上演予定(山形、仙台、桐蔭学園での公演予定あり)
こまつ座舞台「母と暮せば」は10月に紀伊國屋ホールにて上演予定(12月まで全国各地で上演予定)

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