木梨憲武、50代で見つけた新しい自分
奥浩哉の人気コミックを実写映画化した『いぬやしき』(4月20日公開)で16年ぶりの映画主演を飾った木梨憲武が、本作で演じた同年代の犬屋敷壱郎と絡めて50代後半から60代に向けてのビジョンを語った。
木梨が本作で演じたのは、余命宣告を受けたその晩、謎の墜落事故の影響で機械の身体になってしまう初老のジジイ・犬屋敷。同じように機械の身体を手に入れた高校生・獅子神皓(佐藤健)と壮絶なバトルを繰り広げる役どころだが、犬屋敷について「自分とほぼ変わらない年齢だったから、撮影に入る前には特に何も準備はしなかった」と振り返る。
3月9日に56歳になり、長寿バラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」の歴史にピリオドを打ったいまだけに、思うところがあるのかもしれない。だが、会社にも家族にも見放された犬屋敷と違い、多くのファンから愛されている木梨の前には新たな未来が広がっている。「ロンドンで6月に幕を開ける木梨憲武展が日本全国を巡回して、オリンピックイヤーでもある2020年の東京開催まで続くし、その間に歌のライブをやって、企画が折り合えばもう一度テレビをやらせていただくかも。表現できる場所があれば、何でも屋の私としてはチャレンジしていこうと思っていますよ(笑)」と語った。
本作について「みんなでひとつのものを作るクリエイティブの面白さを味わったし、毎日、楽しくて仕方なかった」と語るが、映画やドラマの仕事を増やしていくのか尋ねると「いやいや、無理矢理増やすと疲れちゃうから」とやんわり否定。「『いぬやしき』も2年前にお話をいただいてお披露目がいまですからね。前倒しでお話をいただいて、タイミングが合えば、もちろんまたやらせてもらいたいですけどね」
その上で「60代をどう楽しく過ごすのか? を考えるのが僕らのような50代後半の犬屋敷世代だと思うんですよね」と話を広げる。「この年齢になると、『ここが痛い』『この薬が効くぞ』という会話が増えるし、身体のバランスが崩れてくる。そういったことと戦いながら、それと拮抗できる楽しいこと、熱くなれる何かを見つけることが60代に向かう準備だと思うんですよ」
そこで木梨自身は“それ”をすでに見つけているのか聞くと、「まだだね」という答えが。「でも、何もないとただぼんやり過ごして、『とりあえず寝ますか』という生活になってしまうので、外に飛び出すために、仕事も趣味もそっちに向かうような気がします」。そのポジティブな前のめりのスタンスが、木梨憲武の若さと活力の源なのかもしれない。「『いぬやしき』を作った佐藤信介監督のように、俺も3年後に自分の映画を撮ろうと想像するのは自由だし、やりたいことに向かうのは自分次第ですからね」。そう言っていつもの笑顔になった木梨が、次は何をしでかしてくれるのか? お楽しみはこれからだ。(取材・文:イソガイマサト)