ウェス・アンダーソン『犬ヶ島』日本の仲間たちに感謝感激!
『グランド・ブダペスト・ホテル』などのウェス・アンダーソン監督が22日、TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた映画『犬ヶ島』来日記念舞台あいさつに来場。野村訓市、夏木マリ、村上虹郎、伊藤晃、池田エライザらステージに集まった日本人ボイスキャストたちを「僕の仲間なんだ!」と誇らしげな顔で紹介し、「長い時間をかけて作った映画です。すでに他の国でも上映されていますけど、僕にとっては今日がワールドプレミアなんです。楽しんでいただけたら」と日本の観客に呼びかけた。この日はコーユー・ランキン、ジェフ・ゴールドブラムも出席した。
近未来の日本を舞台に、行方がわからなくなった愛犬を捜す旅に出た少年と犬たちの冒険をストップモーションアニメで描き出した本作。日本を舞台とした作品ということで、イベントには力士と呼び出しが登場し、コーユー、ジェフ、ウェスの来日組3名は、呼び出しに名前を呼び上げられながらステージに登壇した。そして「スピーチをさせてください」と切り出したウェスは、「2012年のころでした。ひとつのアイデアが生まれたんです。何頭かの犬が置き去りにされて。それを助ける男の子の物語を思い描きました。そしてその時に、わたしの脚本を書いたりするコラボレーターたちと、ひとつの質問を自分たちに投げかけました」と話す。一生懸命練習したという日本語で「黒澤さんならどうするだろうか?」と続けると、会場からは拍手が沸き起こり、「この映画は、黒澤監督の映画からの影響なくてはできませんでした」と改めて巨匠に敬意を表した。
ウェスは「ほかにも多くの人たちとコラボレーションを行いました」とコメント。野村、夏木、村上、伊藤、池田といった日本人キャストの名前を呼び上げると、彼らがひとりずつ「はい!」と言いながらステージに登壇。ウェスは「あと野田洋次郎さんや渡辺謙さんにもお礼を申し上げたいんだけど、残念ながら今日は欠席です」と言いつつも、横に並んだキャストたちを見つめて誇らしげな表情を見せた。「そしてこの方々の他にも、僕はすばらしいアーティストや巨匠たちからインスピレーションを受けました。その方々にもお礼を言いたいと思います」と語るウェスは、本作のポスターを作った大友克洋をはじめ、宮崎駿、高畑勲、庵野秀明、今村昌平、北野武、仲代達矢、三船敏郎、志村喬、香川京子、葛飾北斎、歌川広重、早坂文雄(黒澤作品の音楽を担当した作曲家)らの名前を読み上げ、感謝の思いを述べた。
一方、ウェスからもらったという浴衣を着て登場した村上は「正直、彼とはさっき初めて会ったんです。録音はiPhoneのボイスメモでやったんです。一回だけ訓市さんとスタジオに入って。スカイプで一瞬だけ話したことはありましたが、何を演出されたか覚えていません。なので今日、やっと実感がわきました」と驚きの告白。ウェスは「そこまで言わなくても良かったのに」と照れくさそうに笑ってみせる一幕もあった。
池田も「お話をいただいた時は、情報がなくて。日本を舞台にした犬の映画を撮るらしいと聞いて。そうなんだ、と思いながら録らせていただきましたが、実際に映画を観て、こんなにも長く日本のことを思ってくれた監督が、その思いをこんなにもすてきな形にしてくれたことが素敵でした」と笑顔。さらに「私の声がウェスの映画のパーツになった」とうれしそうな夏木も、「人間の役を日本人がやっていて。各国の人がアフレコをしていますけども、考えてみたら日本のドラマなので、日本版が一番パーフェクトな形なんじゃないかと思っています」とアピールしていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『犬ヶ島』は5月25日より全国公開