松岡茉優『万引き家族』の安藤サクラは「絶望的にすばらしい」
女優の松岡茉優が2日、早稲田大学で開講されている講義「マスターズ・オブ・シネマ 映画のすべて」に来場、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞パルムドールを受賞した『万引き家族』で共演した樹木希林、安藤サクラという女優陣に対する正直な思いを吐露した。
映画・テレビドラマ・アニメーションの関係者をゲストに迎え、映画・映像制作のプロセスを学ぶ本講座。この日は同大学の理工学術院(基幹理工学部)教授を務める是枝裕和監督の新作『万引き家族』に出演する松岡がゲストスピーカーとして登壇し、会場は超満員となった。
まずは松岡のキャリアについてトークはスタート。「キャリアは15年くらいなんですけど、でもギュッと凝縮したら5年くらい。不遇な子役時代というのがありまして。わたしは是枝監督の映画に出ているようなスター子役じゃなくて、その他大勢でしたから」と切り出す松岡。「是枝監督の子役への指導方法ってとてつもなく愛のあるやり方なんですよ。『誰も知らない』の俳優さんが今をときめく俳優さんになっていますけど、わたしも子役の時に監督の映画に出ていたら、今はとんでもない女優さんになっていただろうなと思うんです」と笑いながらコメントした。
そんな松岡に、「もうとんでもない女優さんになっていると思いますよ」と返した是枝監督は、本作の女優陣のキャスティングについて、「各世代の一番うまい役者を選ぶというのがコンセプト。何をもって、一番うまいかはいろいろ意見があるでしょうが、今回は樹木希林さんがいて、安藤サクラさんがいた。そこに太刀打ちできるというのは相当なこと」と語った。
樹木について松岡は「わたしからしたら、とんでもない人物。尊敬という言葉ではあてはまらないくらい伝説の人なんですけど、最初の撮影の時に、おばあちゃんとしての温度、匂いを感じて、この人に甘えられると思ったし、一瞬にして孫になりましたね」と述懐。さらに安藤について「誤解を恐れずにいうと、全女優にとって絶望的な存在なんですよ。うそでしょ、というくらい。“女優にとって”といったら、リリー(・フランキー)さんは“俳優にとって”と言っていましたが、絶望的にすばらしいお芝居をなさっています」と告白した。
「サクラさんとわたしは10歳くらい年齢が違っていて。『愛のむきだし』で共演したときは、サクラさんは(今の)わたしくらいの年齢。10年後にわたしが安藤さんのレベルまでできるのか。だから本当はカンヌ国際映画祭で赤いじゅうたんを歩く時に、同じ笑顔で歩けないと思ったんですよ。10年かかるか、20年かかるか分からないけど、この人と同じ笑顔でレッドカーペットを歩きたいと思ったのが正直なところです」と素直な思いを明かした。
昨年末から今年の頭にかけて、是枝監督の現場および三谷幸喜の舞台を体験することになり、松岡がいうところの「不遇の時代」の2つの夢がかなったという。「これでわたしの人生のチャプター1が終わったなと思いました」と語った松岡は、これから女優としてのチャプター2に向かうにあたり、「今回、樹木さん、安藤さんの女性としての豊かさを強く感じて。それは日々の生活もそうだし、この仕事への向き合い方もそう。人としての年輪が厚くないとあの芝居ができないと思う。だからこれからどんどんとインプットして、第2次成長期みたいに挑めたらいいなと思います」と決意を語る。そして最後に「パルムドール、おめでとうございます!」と呼びかけながら、是枝監督と熱いハグを交わした。(取材・文:壬生智裕)
映画『万引き家族』は6月8日より全国公開(6月2日、3日に先行上映あり)