美保純デビュー作を手がけた渡辺護監督などピンク映画をイタリアで4K上映
日本の国映株式会社とドイツの映画会社ラピッド・アイ・ムービーズが共同で行っているピンク映画の4Kデジタル修復・保存プロジェクトの第4弾・向井寛監督『ブルーフィルムの女』(1969)と第5弾・渡辺護監督『おんな地獄唄 尺八弁天』(1970)が、このほど北イタリアで開催された第20回ウディネ・ファーイースト映画祭で初披露された。
同映画祭ではたびたびピンク映画を特集するほど認知されており、この日も若い観客が多数会場に訪れていた。
同プロジェクトは若松孝二、足立正生、周防正行らを輩出した日本映画の財産であるピンク映画を修復し、低予算の厳しい条件ながら自由な発想で作られた作家性溢れる作品を今に伝えるもの。先に4K化された3作品、大和屋竺監督『荒野のダッチワイフ』(1967)、足立正生監督『噴出祈願/十五才の売春婦』(1970)、周防正行監督のデビュー映画『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984)は今年2月のベルリン国際映画祭で披露され、大きな話題を呼んだ。
今回上映された『ブルーフィルムの女』は、父の借金で家庭が崩壊した娘が、女の武器を使って金の亡者たちに復讐する哀しき人生。プロデューサーとしても山本晋也監督『生贄の女たち』(1978)ら数多くのピンク映画を手がけた向井監督の初期作品であり、清水宏監督『大学の若旦那』(1933)をはじめ松竹で活躍した俳優・藤井貢の出演作としても知られている。
一方、『おんな地獄唄 尺八弁天』は女渡世人・弁天のお加代の復讐劇。監督は、200本以上のピンク映画を監督し、美保純、可愛かずみらを世に送り出した巨匠・渡辺護。脚本を、鈴木清順監督らと結成した脚本家グループ「具流八郎(ぐるはちろう)」のメンバーで、『荒野のダッチワイフ』からアニメ『ルパン三世』(1978)まで幅広いジャンルで才能を炸裂させた大和屋監督が手がけていることでも注目だ。
修復し、新たに上映可能にするためにはさまざまな著作権をクリアする必要があり、今回は『ブルーフィルムの女』の劇中で使用されていた楽曲の許諾が得られず、一部、音楽を差し替える作業も要したという。しかしいずれの作品も色彩鮮やかに甦り、プロジェクトに関わった関係者からも感嘆の声が上がっていた。
なお、『ブルーフィルムの女』はドイツ・フランクフルトで6月3日まで開催されるニッポン・コネクションでも特別上映される。また同プロジェクトは第10弾まで続くが、残り5作品についてラピッド・アイ・ムービーズのステファン・ホールは「これから国映と協議をして5作品を選びたい」と語っている。(取材・文:中山治美)