是枝監督『万引き家族』に続く新作はフランス人キャストと 秋より撮影
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した映画『万引き家族』(6月8日公開)の是枝裕和監督が6日、都内の公益社団法人・日本外国特派員協会で記者会見を行った。是枝監督はパルムドールのトロフィーも持参し、海外の報道陣を前に掲げて笑顔を見せると、記者陣から大きな拍手が送られた。
親の年金を不正に受給していた家族が逮捕された事件に着想を得た本作。治(リリー・フランキー)、息子・祥太(城桧吏)、妻・信代(安藤サクラ)ら東京の下町で、生計を立てるため家族ぐるみで軽犯罪を重ねる一家の顛末を描く。信代の妹・亜紀に松岡茉優、治の母・初枝に樹木希林、治が見かねて連れ帰る傷だらけの女の子に佐々木みゆがふんする。
是枝監督は登壇すると「こんばんは。こんなにたくさん夜に集まっていただきありがとうございます」と嬉しそうな表情。のっけより日本の貧困問題など、この作品に対する政治的な背景、テーマについての質問も受けたが、「僕自身は社会的、政治的問題を喚起をする作品として作ったわけではない」とコメント。「カンヌにいる間に映画に対して演出と役者とスタッフが調和がとれているとよく言われた。しかも審査員の女優さんたちがこぞってこの映画に出ている女優たちを褒めてくれた。それが心の底から嬉しかった」と述べ、政治的テーマに対する評価には慎重な発言。
一方で、「2000年代に入っていろんな映画祭に参加するようになったんですけど、いろんなところで日本映画には政治や社会の問題が取り上げられていないと指摘されました。興行として成立しないという判断で、大手の映画会社がしてこなかったのも事実です。企画を出しても『ちょっと重いんだよな』と言われることが結構ありましたから」と政治的テーマに消極的な日本映画の現状も指摘する。
また、次回作はヨーロッパで撮影すると報道されていることについて質問を受けると、「なぜかいろんなところから情報が洩れている。どこまで話していいのか」と苦笑い。「秋にフランスで、フランスの役者さんと映画を撮ることにはなっています。6月の終わりからパリに行きます」と明かし、「まだ何も決まっていないのに出演者のギャラの話まで報道に出ている。正式なことは会見を開いて話しますので」と報告した。
この日は是枝監督の誕生日。海外記者から「お誕生日おめでとうございます」と声をかけられる一幕もあった。(取材・文:名鹿祥史)