ブライアン・クランストン、人生の転機語る
海外ドラマ「ブレイキング・バッド」などの名優ブライアン・クランストンが、『6才のボクが、大人になるまで。』などのリチャード・リンクレイター監督によるロードムービー『30年後の同窓会』(上映中)の撮影を振り返るとともに、人生の転機や俳優、クリエイターとしての信念を明かした。
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クランストンがスティーヴ・カレル、ローレンス・フィッシュバーンら名優たちと息の合ったアンサンブルを披露する本作。クランストンは、かつてベトナム戦争に従軍したしがないバーの経営者サルに。かつての戦友であるドク(カレル)の戦死した息子の亡骸を故郷に連れ帰りたいという願いを叶えるため、今は神父として暮らすミューラー(フィッシュバーン)も巻き込んで旅に出る。
サルは3人の中で最も無鉄砲でおしゃべり、一言でいえば無茶苦茶なキャラクターだが、クランストンは次のように解釈している。「サルはベトナム戦争の時代を人生の中で一番楽しくもあり、同時に最悪の時代だったと思っている。今は鬱で、いろんなことに落胆して、ある意味PTSDも抱えている。お酒をガブガブ飲んで人に絡んで食べ物を貪るのは、何かを感じたいから。でも同時に感じたくないという気持ちもある。ケンカも、彼にとっては発散するはけ口なんだと思う。頭のいい方ではないけど、ニクめない男で友達思い。『気持ちはよくわかる』と言ってくれる人なんだよね。そういうところはある意味、高潔な男だと僕は思う」。
サルは、この思いがけない旅によって人生の転機を迎えることになるのだが、クランストンにとっての転機として欠かせないのが、日本でも熱狂的なファンを生んだ大ヒットドラマ「ブレイキング・バッド」。本作の成功により彼は一躍ブレイクし、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)ではアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。クランストンは「確かにあの作品は僕にとって大事件だった。一個人としても、プロの役者としても転機になった。そういう意味ではとても感謝している。もし『ブレイキング・バッド』がなければ、この映画に出演することもなかったかもしれない。自伝にも書いているけど、キャリアにとって必要なものの一つに運がある。特に芸術、俳優業を突き詰めるには否めない要素。だから僕は、そういう幸運に見舞われたんだと思う」と当時を振り返る。
サル、ドク、ミューラーのようにクランストンにとって弱みを見せられる存在を問うと、親友や妻に加え、エージェントを挙げた。「エージェントと親密であることを意外に思われるかもしれないけど、こういう職業だから僕が何に掻き立てられるのか、どういうものに共鳴するのかを理解してもらわないといけない。だから、エージェントには僕の哲学を知ってもらうために深く付き合ってもらっているんだ」とその理由を説明。
クランストンといえば、ドラマ「マルコム in the Middle」「ブレイキング・バッド」「スニーキー・ピート」シーズン2などで監督やプロデューサーとしても才能を発揮しているが、俳優とクリエイターのスタンスの違いについては「特にないね。俳優においても監督においても、自分に課すレベルは厳しいんだよね、僕は。だからそこに到達するには一生懸命頑張るしかない」とのこと。続けて、「だから実は僕には趣味がない。仕事が趣味(笑)。レクリエーションよりもクリエーションが好きなんだ。いつも何かを作り出そうとしていて、ある作品の1シーンや、企画のアイデアを考えている。昨日もお風呂でアイデアが思い浮かんですぐプロデューサーに連絡をした。そんな生活だよ」と根っからのクリエイターであることをうかがわせた。(取材・文:編集部 石井百合子)