『コールド・スキン』と『シェイプ・オブ・ウォーター』の違いを監督が語る
『ヒットマン』のザヴィエ・ジャン監督が、アルベール・サンチェス・ピニョルの小説「冷たい肌」を映画化したSFクリーチャーアクション『コールド・スキン』より、『シェイプ・オブ・ウォーター』との比較やクリーチャーデザインについてジャン監督が語ったインタビュー内容が、配給のハピネットより公開された。
『コールド・スキン』は、孤島に暮らす2人の男たちが、毎夜襲い掛かってくる謎のクリーチャーと命懸けの激闘を繰り広げるサバイバルアクション。クリーチャーデザインを『パンズ・ラビリンス』などに携ってきたアルトゥーロ・バルセイロが手掛けている。上映は、新宿シネマカリテの映画祭「カリコレ2018」(7月14日~8月24日)、大阪・シネマート心斎橋ほかにて。(編集部・小松芙未)
以下、ザヴィエ・ジャン監督インタビュー全文
Q:映画化のために原作を読んだ感想は?
ストーリーがとても素晴らしくて、映画化したいと思いました。
なるべく原作に近いように映画化し、原作のストーリーをそのまま、100%に近い形で可能な限り映画に落とし込みたいと思いました。
また、「アネリス」のキャラクターが特に好きでした。
Q:どのような経緯で『パンズ・ラビリンス』のアルトゥーロ・バルセイロと組んでクリーチャーデザインを行うことになったのか。デザインについてリクエストした、また、こだわった部分は?
原作で描かれている特徴をベースにして、クリーチャーデザインを行いました。
原作のファンがとても多いので、ファンが想像していたようなクリーチャーであったと思ってもらえるようにデザインしました。
また、ダーウィンの進化論をもとにしてつくっていきました。リアリズムを追及し、この世界で本当に存在するような生き物をデザインしました。そのために、生物学者とも話し合いを重ね、水の中でどのように進化して、どのような外見になるのか、科学的なディスカッションをして、そこからデザインをしました。
Q:クリーチャーが大量に出てくるが、VFXで苦労した点は?
この映画では膨大なVFXを使っていて、特殊メイクとスペシャルエフェクトの両方を駆使しています。1,000カット以上のCGIを使ったシーンがあり、フルCGIのシーンも多くあります。ランサローテ島で撮影を行ったため、人が住んでいるところは隠さなければならず、島自体を長くするなどの調整も行いました。灯台については、実物大の灯台と小さい灯台をロケ地に作りもしましたし、イントロとエンディングはフルスペシャルエフェクトで制作しています。映画中盤のクリーチャーが大量に攻撃してくるシーンもスペシャルエフェクトで、子供のクリーチャーが出てくるシーンは、90%がCGです。
本作は、ヨーロッパで一番実力のあるVFXスタジオ、エル・ランチートのフェリックス・ベルジェスがVFXを手掛けており、J・A・バヨナ監督の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のVFXも手掛けています。
Q:カナリヤ諸島での撮影で印象に残っていること、苦労は? アイスランドでもロケハンをしたとのこと。印象・感想は?
レイキャビックの近くで撮影をしようとしていたが、アネリスがほぼ裸でいなければいけないため、夏でも非常に寒く、風の強いレイキャビックではなく、火山島の風景を探すため、ランサローテに行きました。南極の感じに近く、アイスランドより風景も理想的だったし、気温が高いことが何よりいい点でした。マイナス面は日焼けをしてしまった点で、毛皮を着なければいけないシーンは大変でした。
ただ、アネリスにとっては、よい環境だったと思います。
Q:『シェイプ・オブ・ウォーター』と比較されることもあるが、映画は観た? どう思った?
『シェイプ・オブ・ウォーター』はとてもロマンチックでパリジャン的な映画で、特にクリーチャーとの恋愛関係を重視しているところが気に入りました。『コールド・スキン』を撮影しているときに、デル・トロが『シェイプ・オブ・ウォーター』を撮影していると知り、クリーチャーものが同じタイミングで出るなとは思っていましたが、私たちはインディペンデント映画で実験的そして文学的、先方は素晴らしいセットの傑作ハリウッド映画。『シェイプ・オブ・ウォーター』は1950年代の映画の雰囲気や特にモンスター映画を参照していてとても映画的ですが、本作は文学的、19世紀が舞台のストーリーになっています。
Q:フレンチ・コメディーの最新作『Budapest(原題)』が公開されたばかりだが、今後のプロジェクトは? どのようなジャンルの映画を撮りたいか、撮るのが好きか。
『Budapest(原題)』は一見ジャンルは異なりますが、実際に映画を見てみるとそんなに『コールド・スキン』と変わらなくて、『Budapest(原題)』はトラッシーなコメディーと『フロンティア』のようなホラーの狭間にあって、エクストリームなフレンチ・コメディーです。次の映画に関してはあまり話せないのですが、なるべく典型的なジャンル映画でバイオレントな作品を撮りたいです。
Q:プロデュースも頻繁に行っているが、監督作とプロデュース作を分ける基準があるのか。
若い演出家と会う機会が多くあり、そのひとりが『Hostile(原題)』の監督マチュー・チュリ(Mathieu Turi)です。今、90年代のアルジェリアの女性解放についての映画もプロデュースしています。私が監督する映画とは全然異なるものになると思いますが、いち映画ファンとして、プロデュースをする時にはあらゆるジャンルの映画を手掛けたいと思っています。私が監督をするときは、やりたいことがある、自分のスタイルがあるのですが、プロデュースでは違うジャンルと、スタイルを極めようと考えています。私が監督としてできないことを、プロデューサーのときにやりたいです。
Q:8月に日本に来る予定があると伺いましたが、プランは? 日本で映画を撮るとしたらどんなものを撮りたい? 日本の印象、好きな日本映画・監督などを教えてください。
日本には、写真を撮るために行きます。日本の季節に関しての本を出したいと考えており、ロケハンをかねて日本に行く予定です。
富士山に1週間、東宝スタジオにも行きたいと思っています。本に関してですが、クリス・マルケルが作ったような、アート系の観光ガイドのようなものを作りたいと考えています。今回だけでなく、10月には秋の紅葉のために、3月には桜のために、また日本に行きたいと思います。
どんな映画が好きかというと、黒澤・小林・溝口・小津監督の作品、1940年代~70年代の映画が好きです。もちろん三池崇史も大好きで、また最近では『シン・ゴジラ』も素晴らしかったです。びっくりしました。『楢山節考』も(1983年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作)、北野武も大好きです。
日本を舞台に映画を撮るとしたら、1980年代に美術品(クロード・モネ「印象・日の出」)を盗んだフランス人の話(日本で売ろうとした)の映画を撮りたいです。
Q:日本のファンへメッセージ
日本の皆様にまず伝えたいことは、世界で一番素晴らしい国に住んでいるということです。
私は日本の大ファンで書道も剣道もしていますし、漫画も読んでいます。前世が日本人だったのではないかと思っています。
小さい頃からも、日常の中で日本アニメが流れており、親しみがあり、本当に日本が大好きです。
可能であれば、1年の半分くらいは日本に住みたいし、溝口健二(監督)も大好きです。
日本で私の映画が公開されるのを光栄に思っています。