原田泰造主演作『ミッドナイト・バス』、監督を直撃!
ニューヨーク・アジア映画際(6月29日~7月15日)で上映された原田泰造主演の映画『ミッドナイト・バス』について、7月11日(現地時間)、ニューヨークのリンカーン・センターにあるエリノア・ブーニン・マンロー・フィルム・センターで、竹下昌男監督が単独インタビューに応じた。
本作は、東京から故郷の新潟に戻り深夜バスの運転手をする高宮利一(原田)が、16年前に離婚した元妻との再会をきっかけに、離れ離れになった家族の再出発を、バスの乗客たちの人間模様とともに描く。作家伊吹有喜の原作を、映画『ジャンプ』の竹下監督が映画化した。
大林宣彦監督の映画『この空の花 長岡花火物語』で監督補として関わった際に、長岡の人々にお世話になり、再び新潟で映画が撮れないかと思ったことが制作のきっかけだったと語る竹下監督。監督デビューしてから、しばらくブランクがあったこともあり、自身が普段からやりたいと思っている物語ではなく、正当な(ストーリー)ものを一度こなしてから(監督として)復活しようと思っていたそうだ。「そんなときに、比較的わかりやすい家族の話である伊吹さんのストーリーが、自分の求めていたものにうまくマッチングしたんです」。
主人公は、小説で背の高い運転手と描かれていることもあり、高速バスの運転席に大きな男が居て、ちょっと窮屈に見えるようなイメージを持っていたという。「ひと昔前の俳優さんならば、高倉健さんみたいな俳優がやるとぴったりだと思っていました。そこで最初にイメージしたのは、渡辺謙さんでした」。だが、渡辺は当時、「王様と私」のミュージカルをニューヨークでやろうとしていたときだった。「それでも渡辺さんは作品を気に入り、関わりたがってくれたんです。ただ、彼自身はもうメジャーな俳優なので、地味な話の映画の割には予算が膨れてしまい、社内会議でこれではなかなか興収を見込めないのではないか? と渡辺さんのキャスティングを断念しました」。
そこで、白羽の矢が立ったのが、初監督を務めた『ジャンプ』で主演を務め、日頃から連絡を取っていた原田だった。「泰造君は、本作のために大型自動車免許を取ってくれ、実際に、全く吹き替え(代役)を使わずに、高速でも走っています。彼がバスを運転していて、撮影に苦労したということはなかったのですが、俳優さんに(バスを)運転させているので、製作サイドとしてはもちろん気を使わなければいけませんでした。ただ、幸いにもあるバス会社でドライバーの教官をやっている方がいらして、泰造君が運転するときは、ずっとサポートで付いていてくれました」。教官が後ろに居たことで原田も安心して撮影に臨めたそうだ。
最後に、今作を通して海外の人に理解してほしい部分を聞いてみると、「家族の構成を含め、一度自立をした子供たちが再び両親と暮らそうとするのは、海外の人にはどういう受け入れられ方をするのか、気になりました。日本では何世代かが、同じ家に住むこともあったりしますが、海外ではある程度大人になったら、家を出て行きますからね。その辺の受け入れられ方を気にしつつも、普遍的な家族の話がどう共感してもらえるのか、興味がありますね」と締めた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)