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『未来のミライ』子供を主人公にした理由

『未来のミライ』の主人公は4歳児のくんちゃん
『未来のミライ』の主人公は4歳児のくんちゃん - (C) 2018 スタジオ地図

 3年ぶりの新作アニメーション映画『未来のミライ』を完成させた細田守監督が、作品誕生のきっかけとなった、自身の長男にまつわるエピソードを語った。映画のキャッチコピーは「ボクは未来に出会った。」ーーボクとは主人公の4歳児くんちゃんだ。生まれたばかりの妹に両親の愛情を奪われた気がして“赤ちゃん返り”を起こしパニック状態に! が、そこに突如、大きくなった妹の「ミライちゃん」が未来からやってくる。

【動画】『未来のミライ』予告編

 「実は同じ境遇だった息子が、『夢で大きな妹に会った』と教えてくれたんです。つまりいきなり成長した妹に会ったと。それを聞いた時、うらやましく感じ、できることならば、僕も会ってみたいと思ったんです。こんなにも小さくて、ぷっくりとした赤ちゃんがどんな学生時代を過ごして大人の女性になるんだろうって興味が湧いて、もう一足飛びに会いたいって(笑)。夢でもいいから会いたかったのですけれど、でも僕は、到底そんな夢は見られない。だから今回映画で作ってみた、というところもありますね」

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細田守監督 写真:高野広美

 くんちゃんの日常の物語がみるみるうちに、家族の「過去・現在・未来」へと広がっていくのは細田作品の真骨頂だが、くんちゃんが時をこえた先で出会い、強い関わりを持つ人物の構想にもこんなエピソードがあった。

 「まだプロットを書いている段階だったのですが、親戚が突然亡くなってしまったんです。とてもお元気だったんですが、93歳で大往生でした。それで当初は“ひいおじいちゃんが健在”という設定だったのを“すでに亡くなっている”と書き換えることにしたんです。でも息子や、生まれたばかりの妹との結びつき、世代をこえた関わりを描かなくては、とも思いまして。先ほどの息子の“赤ちゃん返り”や不思議な夢など、現実に起こったこととのやりとり、実際の出来事に多大な影響を受けて作った映画です」

 物語の舞台は横浜市磯子。毎回、細田監督が緻密なロケハンを行うのはよく知られていることだ。

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くんちゃんが未来からやってきた妹と出会う設定は、細田監督の息子が夢で見た出来事から生まれたという (C) 2018 スタジオ地図

 「横浜っていうと“みなとみらい”を中心に、きらびやかなイメージが浮かぶかもしれませんが、磯子区のある根岸湾の埋め立て地には戦時中、石川島航空工業など軍需工場が作られ、戦後埋め立てられたあとには重工業地帯となり、そこで働く方々の住宅が削った丘に大量に建ち……と、つまりは日本の高度経済成長期の歴史を地形的に表している場所でもありまして。今回の映画で、新たな家族像を見つめようと考えた時に、やはり戦後の日本の歴史を経た上で、今この現在へと辿り着いていることを示す必要があり、磯子はその時代の変化を刻みこんだ象徴的な土地だったんですね」

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 一見、突飛な物語だが、とても深遠な“歴史と未来”を描いた作品。細田監督のリアリストな面を軸にしながら、劇中には自由なイマジネーションが羽ばたいている。

 「何かに触れて感動し、胸が震えるような思いをすることは、残念ながら大人になるにつれて減っていきますよね。子供が主人公だと面白いのは、一緒に子供時代を生き直すことができ、その好奇の目に戻って世界を眺められるから。それをアニメーションで描くことで、よりみずみずしく表現できる。そう僕は固く信じています」(取材・文:轟夕起夫)

映画『未来のミライ』は7月20日より全国公開

映画『未来のミライ』予告編 » 動画の詳細
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