『孤狼の血』白石和彌監督、日本映画の暴力描写は生ぬるい プチョン映画祭に初参加
柚月裕子の小説に基づき、昭和に生きる暴力団同士の抗争や、それを追う刑事たちを描いた映画『孤狼の血』が、第22回プチョン国際ファンタスティック映画祭で19日に上映され、白石和彌監督がティーチインに登壇した。
同映画祭のワールド・ファンタスティック・レッドレッド部門に正式出品された本作。昨日まで別の映画を撮影しており、イベント当日のプチョン入りとなった白石。「(韓国の映画祭では)釜山には何度か行きましたが、プチョンは初めて。知り合いの多くの監督から『プチョンに行くよ』と聞いていたから楽しみにしていたのに、ほとんど帰国してしまっていて、次回はオープニングから来たい」とやや寂しそうな様子。それでも、客席からの積極的な質問が飛び出すと、真摯に答えていた。
劇中、暴力描写がかなりあることに関して、女性観客から質問が。これに対して白石監督は「日本映画の暴力描写は生ぬるいと思う。プロデューサーからは振り切ってもいいと言われましたが、興行にかけられる範囲内に留め、単に残忍なのではなく、物語や登場人物に絡んでいくよう説得力のある描写を心掛けました」と説明。イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミンらが共演した韓国映画『新しき世界』(2013)を参考にしたことも明かした。
韓国でも人気がある主演の役所広司は、白石作品への出演は初めて。「日本のトップスターと一緒に仕事ができて光栄。彼は人格者で、疲れているエキストラにも自分から声をかけるんです。ファン・ジョンミンさんにも同じエピソードがあると聞きました」。
ところで、韓国人にとってヤクザは未知の存在だ。ヤクザに出会ったらどうすればいいかという問いに、白石監督は「映画の舞台は1988年であり、ヤクザたちが大腕を振って歩いていた最後の時代です。今ではあのような格好のヤクザたちはいなくなり、出会っても目をそらすことなく普通にしていればいい。かといって、わざわざ親しくなる必要はないですし」と答えた。
同映画祭では、白石監督の『サニー/32』も出品されている。ふたつの映画の違いについては「『孤狼の血』はストレートで思いっきり投げた。『サニー』は変化球狙い。どちらが自分のスタイルなのか答えるのは難しいが、作品に合わせてやっていきたい」と柔軟な姿勢を見せている。(取材・文:土田真樹)
第22回プチョン国際ファンタスティック映画祭は、7月22日まで開催