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アメリカで台頭するフィリピン料理、ドキュメンタリー映画に

左からアレクサンドラ・クエルド監督とシェフのアルヴィン・ケイラン
左からアレクサンドラ・クエルド監督とシェフのアルヴィン・ケイラン

 ニューヨークのアジアン・ソサエティーで開催されたアジアン・アメリカン・インターナショナル・フィルム・フェスティバルで、クロージングナイトを飾った新作『ウラム:メイン・ディッシュ(原題) / Ulam: Main Dish』について、アレクサンドラ・クエルド監督、シェフのアルヴィン・ケイラン、レストランオーナーのニコル・ポンセカが、8月4日(現地時間)、上映後のQ&Aで語った。

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 本作は、これまでアメリカ国内のアジア料理の中では過小評価されてきたフィリピン料理が、近年、台頭してきた経緯を、フィリピン文化と共に描いたドキュメンタリー作品。

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 カリフォルニア州のオレンジカウンティで育ったというクエルド監督。当時はフィリピン系の大きなコミュニティーは存在しなく、自身のアイデンティティーを見つけられなかったという。「自分はアメリカ人なの? それともフィリピン人なの? わたしは一体誰なの? と自問していたわ。その後、フィリピンを訪れた際に、二つの国のそれぞれの文化の重要性に気づいたの。そこで今作を製作することで、フィリピン人とアメリカ人の間にあるギャップの架け橋になれば良いと思ったわ」と製作経緯を語る。

 シェフのアルヴィンは、7年前にカリフォルニア州でフィリピンの魚料理を提供した際、一つも売れなかった経験があるという。「でも最近、L.A.にフィリピン人のコミュニティーが存在することを聞いて、そこで7年前と同様の料理を出したところ、すぐに売り切れてしまったんだ」。同じ味のものを、同じ値段で出したのに、こんなにも違いがあったことに驚いたようだ。「僕らフィリピン人は、長年アメリカでフィリピン料理を作ってきたから、僕らの世代がアメリカでのフィリピン料理のパイオニアではないんだ。今ようやくフィリピン人やフィリピン料理が、他の文化や社会に受け入れられてきているってことだろうね」と苦労を語り、客から「息子さんは、素晴らしい料理を作っている」と言われるまで自身の母親にも評価されなかったと明かした。

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ニコル・ポンセカ
自身を「社会運動家でもあり、事業家でもある」と語るレストランオーナーのニコル

 両親が共に異なる人種だというレストランオーナーのニコルは、「バイレイシャル(二つの人種からなること)というわけではないけれど、多民族国家のアメリカに住んでいる限り、完全にアメリカ人でいられるし、完全にフィリピン人でもいられる。わたしがレストランを経営するのは、そんな感情を(レストラン経営を通して)増幅させたいという気持ちになったからなの」とキャリアのきっかけを語る。彼女にとって、レストラン経営は(フィリピン文化を広める)社会運動みたいなものであり、それゆえ、自身を「社会運動家でもあり、事業家でもある」と考えているのだそうだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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