『ルーム』監督、ゴシックホラーに挑戦した新作を語る
映画『ピーターラビット』や『スター・ウォーズ』シリーズのドーナル・グリーソンが、新作『ザ・リトル・ストレンジャー(原題) / The Little Stranger』について、女優のルース・ウィルソンとレニー・アブラハムソン監督と共に、8月16日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
【作品写真】ドーナルとアブラハムソン監督の初タッグ作『FRANK -フランク-』
本作は、作家サラ・ウォーターズの小説「エアーズ家の没落」を、映画『ルーム』のアブラハムソン監督が映画化したもの。第2次世界大戦後、かつて隆盛を極めたものの、現在は古びたハンドレッズ領主館に暮らすエアーズ家。かつてこの屋敷に憧れていた医師のファラデー(ドーナル)は、病気にかかったメイドや戦争で負傷した人々を往診するため屋敷に出入りすることになる。往診を繰り返していくうちに、独身の娘キャロライン(ルース)に惹かれていくが、屋敷内で起こる小さな異変が不穏な空気を漂わせていく。
『ルーム』後、数々のオファーがあったというアブラハムソン監督。今作の原作を読んだのは、2009年に出版されたばかりのときだったが、(この原作の内容が)ずっと記憶に残っていたそうだ。「原作の本質は、20世紀半ばに特別な屋敷に住む家族のドラマだが、さまざまなジャンルの要素も盛り込まれているんだ。それに、ゴシックホラーの話をもとに、個々のキャラクターを掘り下げていて、そんな内容が頭を離れなかったね。だから、『ルーム』で(世間から)騒がれた後も、今作を手掛けたい気持ちは揺らがなかった気がするんだ」と今作を手掛けた理由を明かした。
ドーナルは演じたファラデー医師について、「彼はそれほど財政的に恵まれていない家庭に育ち、上流階級のような存在になりたいと願っているんだ。エアーズ家にはそんな(上流階級の)世界観が集約されていて、彼らの世界にファラデーはどっぷりつかりたいんだ」と説明する。また、医師だけに、おそらくエアーズ家より金は稼げ、様相も上流階級に見せることもできるが、彼が上流階級の世界に属していないことが映画内ではわかるのだと語る。「それでも、彼はこの屋敷を気に入り、さらにこの屋敷のエアーズ家の人々も好きになっていく。だから、彼ら家族の一員になりたくて、屋敷内の異変が起きたときも、何が起きているのか知りたがるんだ。そして、その間にキャロラインと親密になっていくんだよ」。
そのキャロラインは、戦時中はある程度、経済的にも社会的にも自由があり、戦後はもとの上流階級に戻るという設定。だが、その上流階級自体が衰退し崩壊し始めていく。「屋敷自体に異変が起き、家族も気が狂い始めていくの。さらに、キャロラインはファラデー医師を仲間で、この屋敷を出るきっかけになる人と見立てているけれど、その一方でファラデー医師は、キャロラインを屋敷内で暮らすきっかけに見立てているの」とルース。キャロラインとファラデー医師の心理戦も興味深く描かれている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)