イケメン双子監督、長編デビュー作を語る
数々のショート作品を手掛けたジョナサン・ベイカー、ジョシュ・ベイカー共同監督が、新作『キン(原題) / Kin』について、8月17日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
本作は、ベイカー兄弟にとって初の長編作品。デトロイトの崩壊したビルで、遺体と謎の武器を発見した少年イーライ(マイルズ・トゥルット)は、その武器を持ち帰り部屋に隠していた。ある日、6年ぶりに刑務所から実家に戻ってきた兄は、父親と対立したことで、父の会社の金庫をギャングのボスらと強奪する。だが、その場に居合わせた父を兄がかばったことで、ギャングから追われる羽目になり、イーライを連れての逃亡を決意する。
2014年に発表した短編『バッグ・マン(原題) / Bag Man』を基に手掛けたという今作。「『バッグ・マン(原題)』は、さまざまなジャンルといろいろなトーンを兼ね備えた作品だったんだ。僕らはそれまで広告会社の宣伝用のビデオを15年も制作してきたから、(今作を通して)もう少し長めのお口直し(何か他のことをして気分を変えること)をしてみたというわけだ」とジョシュ。観客の期待をもてあそびながら、冒頭とは全く異なったエンディングに仕上げたと明かした。
舞台をニューヨークのハーレムからデトロイトに移した理由については、「どんな話を(観客に)伝えたいか考えたときに、テーマやキャラクターなどを思い浮かべるけれど、僕らは今作でまず兄弟を描きたいと思ったんだ。そして次に、“Decay(腐敗、衰退)”というテーマが頭をよぎったんだ。今作のキャラクターたちがみんな失意に陥っていたり、傷ついていたりする設定だ。そんなことを考えていくと、デトロイトというロケーションが適しているように思ったんだよ」とジョシュ。一方ジョナサンは「これまでニューヨークに住み、ニューヨークで短編を撮っていたけれど、今回は予算もあったから、デトロイトで撮影しただけだよ」と笑顔で答えた。
イーライを演じたマイルズについては、「彼は、せりふを発せずに、さまざまな演技ができるね。オリジナルの短編では、主役の少年はせりふが全くないが、今作ではせりふはあるものの、その短編が持っていたトーンを変えたくないと思ったんだ。だから、イーライは内向的だけどスマートで、家族内で次から次へと起こる出来事をしっかり観察している設定で描いてみたんだよ」とジョナサン。また、アフリカ系アメリカ人の少年を主役に据えることも、彼らにとって重要なことだったと明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)