柄本佑、3年寄り添った主演作の公開に喜びと切なさ
俳優の柄本佑が1日、新宿武蔵野館で行なわれた映画『きみの鳥はうたえる』初日舞台あいさつに石橋静河、染谷将太、足立智充、山本亜依、柴田貴哉、三宅唱監督と出席。数々の作品に出演している柄本だが、2015年にオファーを受けてから公開までの3年、「ずっと僕のなかにあった役」と本作が特別な存在であったことを明かした。
本作は、『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などの原作者・佐藤泰志の小説を映画化。函館市の郊外にある書店を舞台に、男女3人の織り成す人間模様を描く。
一緒の撮影シーンが多かったという柄本、石橋、染谷。とにかく3人でたくさん笑って遊んで「疲れるまで楽しむ」ことを真剣に行なったという。柄本が「初日から終わりたくないと思った」というぐらい大切な時間が続いた撮影だったことを振り返ると、染谷も「楽しむって疲れるんだなってことを知りました」と同調する。
柄本や染谷の言葉どおり、劇中では3人が夜通し酒を飲み、踊り、笑いあう姿が印象的に描かれている。特に柄本は撮影中、かなりのハイテンションだったようで、染谷が「祐さんはぶっ壊れていました」と証言すると、柄本自身も「躁状態でしたね」と普通ではなかったことを認めていた。
舞台あいさつ中も、他の人の話にチャチャを入れるなど、明るく振る舞っていた柄本だが、作品への出演経緯を聞かれると、オファーを受けた3年前からずっと本作が、柄本の側に寄り添っていたことを告白。「本当はとても感慨深いんです。でも感慨深そうにしちゃうと、寂しくて泣いちゃうから……」と告白した。
三宅監督は、そんなキャスト陣を「すばらしい俳優たちとこの映画を作ることができました」と温かい目で見渡しつつ、佐藤の原作、函館の人々と風景も、この作品に欠かせないものであったと力説。そして、監督自身にとっても非常に大切な作品であると力を込めて語っていた。(磯部正和)