S・キング初の探偵ドラマ「ミスター・メルセデス」、主演俳優らが語る
ホラーの巨匠スティーヴン・キングが、ハードボイルドの探偵ものとして手掛けた小説「ミスター・メルセデス」のテレビシリーズ化作品について、主演のブレンダン・グリーソンが、ジャック・ベンダー監督、ホーランド・テイラーと共に、8月8日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
【画像】こちらも大活躍中!ブレンダンの息子、ドーナル・グリーソン
暴走するメルセデス・ベンツが行列に突っ込み、多くの死者を出すという無差別殺人事件が起き、未解決のまま2年が経過したある日、当時事件を担当していたオハイオ州の元刑事ビル・ホッジス(ブレンダン)のもとに、「ミスター・メルセデス」と名乗る犯人らしき人物から挑発的な手紙が届けられる。デイビッド・E・ケリーが製作総指揮と脚本を務め、テレビシリーズ「LOST」で製作総指揮を担当したベンダー監督がメガホンを取った。ホーランドは、ビルの隣人アイダを演じている。
ベンダー監督は、『LOST』を手掛けているとき、スティーヴンがドラマの大ファンであることを知らされ、その後、数年間(スティーヴン・キング原作の)テレビシリーズ『アンダー・ザ・ドーム』で一緒に仕事をしたという。「スティーヴンから探偵ものの初作品を書いたと聞かされ、未出版の『ミスター・メルセデス』の本が送られてきたんだ。僕は、外見がモンスターに見えるよりも、むしろモンスターが(心に)宿る人を描いたハードボイルドな内容であることに惹かれたよ。スティーヴンは、われわれが怖がることを書くことに長けた人だから、映像化は難しいとも思ったけれど、どんな製作上の障害が待ち受けていようと、キャラクターを中心に描き、適格な俳優を起用すれば、良い作品ができると信じていたんだ」。
主演のブレンダンは、演じた元刑事のビルを(刑事だった頃に比べ)年を取り、精神的にも多少衰弱していているキャラクターだと説明する。「実際に、引退した刑事の自殺率が高いということを聞いたことがあるが、彼らは家族を犠牲に仕事をしてきたものの、その仕事も終わり、生きる目的が欠乏してしまうらしいんだ。刑事時代の事件を通して、ひどい人間性を目の当たりにしてきてもいるしね。それでもビルは、自身の良識に必死にしがみついて、自殺願望を自らを食い止めているんだ」。そして、ビルがそんな良識を持っていることが、この作品のコア(核)なのだと語った。
ビルの隣人アイダは、スティーヴン・キングの原作には存在せず、テレビシリーズで加えられたキャラクターだという。「ビルの厳しい人生には温かみが無いから、(スタッフは)どこか温かいキャラクターが必要だと思って、付け加えたんだと思うわ」とホーランド。彼女は、デイビッド・E・ケリーと、テレビシリーズ「ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル」でタッグを組んだことがあったそうで、「あの番組では、年配の判事を演じていたの。あの役は、私生活も素晴らしい判事として書かれていたわ。デイビッドはそんな素晴らしい女性を描くのに長けていたし、あの当時としては画期的な役柄だったから、素晴らしい体験だったわね」と当時を振り返った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)