ろくでなし子裁判も担当 同性愛の弁護士カップルを追う『愛と法』満席の初日に一同ホッ
同性愛者の弁護士カップルの日常を追ったドキュメンタリー映画『愛と法』の初日舞台あいさつが29日に渋谷のユーロスペースで行われ、弁護士の吉田昌史さんと南和行さん、そして戸田ひかる監督が出席。立ち見も出る満席に感慨深い様子をみせた。
大阪で弁護士事務所を共同経営し、プライベートでもパートナーである吉田昌史さんと南和行さんの日常を映し出した本作。昨年の東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に唯一のドキュメンタリー映画として選ばれ、作品賞を受賞するなど、高い評価を受けた。
満席の劇場を見回した戸田監督は「こんなにたくさん来てくれるとは思っていなくて。東京国際映画祭でプレミアを迎えた映画なので、今回はちょっとした里帰りのような、うれしい気持ちでいっぱいです」と晴れやかな表情。続けて吉田さんも「先週公開された大阪では満席になったんですけど、東京は人が来てくれるのか心配でした。1時間に2、3回くらいオンラインで予約状況を見ていた」と語るなど、大勢の観客にホッとした様子の3人だった。
両親の仕事の関係で子供時代をオランダで過ごし、学生時代からロンドンで生活しているという戸田監督は、ステレオタイプではない、多様な日本人の姿を描きたいと思ったという。「きっと大阪に行けば面白い人に会えるだろうなと思って行ったんですが、まさにドンピシャ。2人がカップルとしてお互いを受け入れ、弱さを受け入れる姿は、人としても理想だなと思った」と制作の経緯を振り返る。
彼らに弁護を依頼するのは、戸籍を持てずにいる人、「君が代不起立」で処分された先生、作品が罪に問われたアーティストなど、それぞれの生き方と社会のしくみとの間で葛藤を抱える人たちだ。その中には「わいせつ物頒布等の罪」などに問われ、後に一部無罪を勝ち取ったアーティストのろくでなし子さんの姿も映し出されている。
南さんも、映画を観た人から、「ろくでなし子の裁判のくだりが面白かった」といった感想を多く聞いたそうで、「この前、関西のテレビに出演した時に、MCの方から、ろくでなし子さんの裁判はニュースのヘッドラインでしか知らなかったけど、映画を観てこういう人なんだとわかった。社会に対してどう思っているのか、ということを聞くことができて良かったと言ってくれた」と振り返る南さん。戸田監督も「なし子さんは、逮捕されて、起訴されて、公判があって、判決が出るまでの最初から最後まで立ち会うことができた。表現の自由を守るために集まった弁護士の方々が、みんなキャラが濃くて。みんな楽しみながら、権利を守ろうと戦う姿がすごいなと思いましたね」と付け加えていた。(取材・文:壬生智裕)
ドキュメンタリー映画『愛と法』は渋谷のユーロスペースほかにて全国順次公開中