故・今敏監督の未完『夢みる機械』凍結の理由 丸山正雄プロデューサー言及
2010年に逝去し、今も全世界で熱狂的に支持されるアニメーション作家の故・今敏監督。10月19日から23日まで行われる第20回プチョン国際アニメーション映画祭で、今監督の『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)、『千年女優』(2001)が特別上映された。20日の『千年女優』上映後に今監督の作品に関わってきたプロデューサーの丸山正雄氏、真木太郎氏がトークショーを行い、今監督の作品世界について語った。
今監督との思い出について丸山氏は「人としての今敏はあまり覚えておらず、アニメーション作家としての今敏はよく覚えています。とにかくモノ作りにかけるパワーは尋常ではない。彼の監督した作品は比較できないほど、どれも傑作。今敏を演じられるのは今敏しかいない」と今監督への絶対的な信頼を口にした。一方、真木氏は「僕はいつも怒られていたので怖い人という印象。だけど、ああいう作品を作る人なので頭が良く、意見をしても結局は言いくるめられてしまう」と作家として頑固なだけでなく、話術の巧みさにも言及した。
ファンとしては、今監督の未完作品『夢みる機械』の動向が気になるところ。一度は他の監督によって制作が続行されると発表されたが、その後凍結されたままになっていた。
これについて丸山氏は「今の日本のアニメ界には、テイストの違った優秀な監督はいますが、今と同じ力量を持つ監督がいない。今のところ今以外では考えられず、プロジェクトを凍結し、プランで終わらせるしかなかった」と思いを明かした。しかしながら、「むしろ海外の才能ある監督がやってくれるのであればやらないとは限らない」と付け加え、再始動の可能性がゼロではないことも示唆した。
一方で、今監督の漫画家時代の作品をアニメ化するプロジェクトは進行中だと語る丸山氏。「具体的なことは決まっていませんが、漫画家時代の作品を原作に他のアニメ監督でやれればと思っています。ですが、僕が年齢的にヤバイのでもう少し長生きしてやりたい」と新作への意欲を見せていた。(取材・文:土田真樹)
第20回プチョン国際アニメーション映画祭は23日まで開催