志尊淳、ブレイクしても揺るがぬ「初心力」
ドラマ「女子的生活」、連続テレビ小説「半分、青い。」、そして映画化もされた「ドルメンX」など話題作に次々と出演し、ORICON NEWSが選ぶ「2018上半期ブレイク俳優(男優)ランキング」では堂々の1位を獲得。俳優・志尊淳にとって2018年は、大きな飛躍の年になった。そんななか、今年を締めくくる待望の主演映画『走れ!T校バスケット部』が11月3日に公開された。周囲のざわめきに対して志尊自身はどんな思いを抱いているのだろうか? 現在の心境を聞いてみると、意外なほどに冷静でストイックな言葉が返ってきた。
志尊の俳優デビューは、人気ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズンで俳優デビューを果たした2011年。そして、2014年から翌年にかけて放送された特撮ドラマ「烈車戦隊トッキュウジャー」でライト/トッキュウ1号役で一気に注目を浴びる。その後も「きみはペット」『帝一の國』『探偵はBARにいる3』など、ひとつのイメージに囚われない多彩な役どころに挑戦し、その地道な努力の積み重ねがブレイクにつながった。
とりわけ今年は、朝ドラ「半分、青い。」へ出演したことが、志尊の知名度をワンランク上に押し上げることになった。志尊自身にとっても感慨深いものになったという同作では、鈴愛(永野芽郁)の漫画家時代の仲間で、「ボクって……」が口癖のボクテを演じた。国民的ドラマといえるほどの注目度の高さを誇る朝ドラでの経験は大きかったようで「さまざまな面で朝ドラは特別でした」と振り返る志尊。「たくさんの方が観てくださっていて、反響がとても大きかったこと。そして、ドラマの中で同じ役を何十年も演じたのも初めてでしたし、永野さん、佐藤(健)さんをはじめ、大勢の素晴らしい役者さんと共演させていただき、すごく刺激になった」と思いをかみしめる。
一方で「ブレイク俳優NO.1」という評価については、志尊の胸中ではいろんな思いが去来するそうだ。「デビュー当時から、『売れたい』とか、『人気者になりたい』といった発想はまったくなくて、今、目の前にある役柄をしっかりと表現することを大切にずっとやってきたので、正直、いろいろな解釈ができる『ブレイク』という言葉に少々戸惑いがある」と吐露。それでも「今までやってきた演技を評価してくださって、いろいろな人に届いたんだなと思うと、もちろん素直にうれしい」と笑みを浮かべ、「逆に僕を(ブレイク俳優NO.1として)取り上げてもらったことで、これまで以上にどん欲に、そして真摯に役と向き合っていきたいという気持ちが大きくなった」と強い眼差しで思いを語る。
そんな志尊にとって、松崎洋の青春小説を実写化した『走れ!T校バスケット部』は、初心に立ち返って新たな気持ちで挑んだ作品だ。約3か月にわたるバスケットボールの特訓にも取り組んだ志尊は「前を向いて生きることの大切さをかみ締めながら、弱小チームを勝利に導く主人公・陽一を泥臭く演じました」と胸を張る。「僕はまだまだキャリアが浅いので、いろんなことを経験して、いろいろな表現を蓄えなければいけないなと思っています。だから、毎年毎年が『挑戦』の年。ただ、その経験値は、年を重ねるごとに高く塗り替えられていくはずなので、手を抜かず、1日1ミリでも成長できるようにがんばりたい」。
周囲から「ブレイク俳優」という名のエールを送られても浮かれることなく、自身を戒め、役者として「初心」を貫く志尊。ストイックなくらいに気持ちを律する彼の眼差しに、大きな可能性を感じた。(取材・文:坂田正樹)
映画『走れ!T校バスケット部』は公開中