河瀬直美、東京オリンピック公式映画監督に就任
『あん』『殯(もがり)の森』などで知られる河瀬直美監督が、「東京2020オリンピック競技大会」の公式映画監督に就任したことが、23日に虎ノ門ヒルズで行われた会見で明らかになった。
オリンピック公式映画は、20世紀初めより、すべての大会で制作されてきた。そして今回、国際オリンピック委員会の決定に基づき「東京2020オリンピック競技大会」の公式映画監督に河瀬監督が就任することになった。今回の公式映画は、2021年春に完成予定となっており、その後、国内外での公開が予定されている。また、映画の著作権はIOCに帰属となり、IOCのオリンピック文化遺産財団管理のもと、オリンピックミュージアムに収蔵されるという。
日本では、1964年東京オリンピックの市川崑監督、1972年札幌オリンピックの篠田正浩監督、そして1998年の長野オリンピックではバド・グリーンスパン監督が公式映画監督を務めてきた。また、河瀬監督は1936年ベルリンオリンピックのレニ・リーフェンシュタール監督らに続き、史上5番目の女性監督となる。
公式映画監督就任会見に出席した河瀬監督は、大勢の記者を前に「今日はわたしの映画が初日を迎える時よりも、何十倍の方がいらっしゃって」と笑いつつ、「(公式映画監督就任に)大変驚いておりますが、自分に与えられた役割を全うしたいと今は考えております」と決意のコメント。さらに「わたしはオリンピックには出ていないですけど、国民体育大会の(バスケットボール)奈良代表として出場したことがあります。そこから映画監督という職業を経て、2020年にオリンピックを記録させていただけることになりました。映画監督になったのはこのためじゃないかと思うくらいに、再びスポーツに向き合うことになったのは運命のような気がします」と誇らしげな顔を見せた。
映画の内容はこれから決めるという河瀬監督だったが、「東北を中心とした復興」「ボランティア」について織り込みたいと構想を明かした。また、オリンピックの公式映画といえば、市川監督が手がけた1964年東京オリンピックの公式映画が、芸術的な内容で高い評価を受けているが、その映画についても「構成力や、カメラワークで物語を伝えていくような力のあるショットがすばらしいなと思います。言葉で説明しなくても、映像でものをいう表現もすぐれていてすばらしい」と感じたという。
また、河瀬作品ならではのゆったりとしたテンポ、芸術性をどれほど織り込むのか、という点に関しては、「わたしを評価していただいている、ゆったりとした映像のテンポというのは変わらないところはあると思いますが、ドキュメンタリーというのは実在する人にカメラを向けるので、わたしがコントロールできない事実があります」とコメント。「(本作は)ドキュメンタリーですから、時間の許す限り足を運んでカメラを回したいと思います。さまざまなところでドラマが始まっていて、見続けることがドキュメンタリーの醍醐味だと思います」と意気込んだ。(取材・文:壬生智裕)