世界で話題のアフリカの暗黒史描く人形アニメがグランプリ受賞!
第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭の受賞結果が5日に発表され、新設された長編コンペティション部門グランプリに植民地時代のアフリカを人形アニメーションでシュールに表現したマーク・ジェイムス・ロエルズ&エマ・ドゥ・スワーフ監督『ディス・マグニフィセント・ケーキ!(英題) / This Magnificent Cake!』(ベルギー、フランス)が受賞した。審査員のアニメーション作家・冠木左和子は「頭良いし面白いし、何でも持ってるじゃん。こいつらになりたい」と独特の表現で賛辞を贈った。
異色の人形アニメーションである、ウールやフェルトを使った温かみのある人形たちが織りなすのは、いわばアフリカの暗黒史。舞台は19世紀後半。植民地を欲する王様、高級ホテルで働くピグミー、事業に失敗してアフリカへ逃亡した実業家ら5人のキャラクターを主人公に、現地でどんな理不尽な事が起こっていたのかを詳らかにする。タイトルは、美味しいケーキを奪い合うように植民地争いを繰り広げていた列強の有様を表現しているという。
上映時間は44分。だが撮影は、2016年夏から始めること8か月。さらに編集に9か月かけた労作だ。その技術と斬新なテーマは第71回カンヌ国際映画祭監督週間に選ばれたのを皮切りに、世界四大アニメーション映画祭の一つである第41回オタワ国際アニメーション映画祭では長編部門でグランプリを獲得するなど国際映画祭を席巻している。
それ以上に、2人には思わぬ反響が待っていたという。活動拠点を置いているベルギーでは、自国が植民地政策をとっていた歴史を知らない世代もいるらしく「私たちの映画が問題提起することになった」(スワーフ監督)という。これは幅広い層に受け入れられやすい人形アニメーションという手法の功績で、審査員のフランスの映像作家エマニュエル=アラン・レナールも「西洋の歴史上、重要かつ政治的な映画を作ってくれた監督たちに感謝します」とコメントした。
その他、短編グランプリには同じく第41回オタワ国際アニメーション映画祭のインディペンデント・ショート部門でグランプリを受賞したレカ・ブシ監督『ソーラー・ウォーク (英題) / Solar Walk』(デンマーク)。新人賞には、第42回アヌシー国際アニメーション映画祭短編部門でグランプリに相当するクリスタル賞に輝いたニンケ・ドゥーツ監督『ブルーイストラート11(原題) / Bloeistraat 11』(ベルギー)と、すでに国際映画祭で評価を受けた作品が順当に受賞した。
いずれの作品も来たる第91 回アカデミー賞短編アニメーション部門へのノミネートが注目されており、新千歳空港からの文字通りの飛躍を期待したいところだ。(取材・文:中山治美)
主な受賞結果は以下の通り。
■短編グランプリ
レカ・ブシ監督『ソーラー・ウォーク (英題) / Solar Walk』(デンマーク)
■日本グランプリ
和田淳監督『秋 アントニオ・ヴィヴァルディ「四季」より』(日本)
■新人賞
ニンケ・ドゥーツ監督『ブルーイストラート11(原題) / Bloeistraat 11』(ベルギー)
■審査員特別賞
・見里朝希監督『マイリトルゴート 』(日本)
・ニキ・リンドロス・フォン・バール監督『ザ・バーデン (英題) / The Burden』(スウェーデン)
※イメージフォーラム・フェスティバル2018では『心の重し』のタイトルで上映
・若井麻奈美監督『タンポポとリボン』(日本)
・ヨルン・レゥワリンク監督『フラワー・ファウンド(英題) / Flower Found!』(オランダ)
■長編グランプリ
マーク・ジェイムス・ロエルズ&エマ・ドゥ・スワーフ監督『ディス・マグニフィセント・ケーキ!(英題) / This Magnificent Cake!』(ベルギー、フランス)
※イメージフォーラム・フェスティバル2018では『この素晴らしいケーキ!』のタイトルで上映
■学生グランプリ
アマンダ・エリアソン監督『スノウ・ホワイト・コロン (原題) / Snow White Cologne』(イギリス)
■新千歳空港賞
ソムナス・パル監督『デス・オブ・ア・ファーザー (英題) / Death of a Father』(インド)
■キッズ賞
ファルホンデフ・トラビ監督『おうち』(イラン、アメリカ)
■ベストミュージックアニメーション
サイモン・ウイルチェス・カストロ&ホリー・バイナム監督
『カティーズ・ワート (英題) / Katy’s Wart』(アメリカ)
■観客賞
橋本麦監督『imai “Fly feat.79,中村佳穂”』(日本)