マット・ディロン、鬼才トリアー監督との初タッグ作を語る
映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『アンチクライスト』の鬼才ラース・フォン・トリアー監督が手掛けたシリアルキラーを描いた注目作『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト(原題)/ The House that Jack Built』について、主演のマット・ディロンが12月13日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
本作は、1970年代から80年代にかけてアメリカのワシントン州を舞台に、高い知性を持ち、殺人をアートに見立てて5人を殺害した連続殺人犯ジャックの12年間を描いたもの。マットがジャック役を務め、『ベルリン・天使の詩』のブルーノ・ガンツ、『キル・ビル』シリーズのユマ・サーマン、テレビドラマ「ガールフレンド・エクスペリエンス」のライリー・キーオなどが脇を固めた。
トリアー監督と初めてタッグを組んだマットは、事前に監督と話し合ったという。「トリアー監督が自身の撮影方法について話してくれたんだ。その内容は、さまざまなアングルで、(現場の状況によって)柔軟に撮影できるものだったよ。だから、撮影中はリハーサルを一度も行わなかったんだ。僕には興味深いことだったね。いつもは、監督が『リハーサルしよう!』と言うと、それは(撮影の遅れを)早く取り戻そうとする悪い兆しを表した言葉に感じるけれど、今作では、現場で起きたことにも対応できる、より理性的な撮影手法をとっていたと思うよ」現場では、さまざまなことに挑戦したため、演技での失敗も許される環境だったそうだ。
個人的に連続殺人犯を題材にした映画には興味を持っていなかったというマットは、トリアー監督になぜ連続殺人犯を描いた作品を作りたいのかと事前に聞いたところ、トリアー監督から「この(ジャックという)キャラクターは、僕にかなり近いキャラクターだ。もちろん僕は誰も殺したりはしないがね」と告白されたという。映画内では12年間にも及ぶ殺人事件を追っていて、ジャックのさまざまな時期を捉えているが、ジャックのキャラクターについては「最初はとても地味で、保守的な男だが、強迫性障害により、犯罪キャリアを高めることで、彼に変化が訪れ、徐々にマニアック化していく」と説明した。
最も困難だったシーンについては「ライリーとの共演シーンだね。ジャックは人に対して全く共感ができないのだけど、僕は共感することくらいはできる。だから、素晴らしい女優であるライリーが怖がっているのを見ると、(現場で)何も怖がることはないと言ってやりたくなってしまうんだ」とマット。だが、それはライリー演じるキャラクターと心理的なゲームをしようとするジャックとは全く反対のことになってしまうため、ジャックの(共感する感情を押し殺した)演技はとても難しかったそうだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)