登坂広臣&中条あやみ、俳優にとどまらない器用さが共通点
歌手、モデル、MCなど、ここ数年注目される俳優は俳優としての活動にとどまらず、積極的に異業種にチャレンジしているように見える。中島美嘉による冬の定番ソングをピュアなラブストーリーに仕立てた映画『雪の華』に主演した登坂広臣と中条あやみも、まさにそんな俳優業にとどまらない活躍をする二人だ。
登坂は三代目 J Soul Brothers のボーカリストとして確たる地位を築くアーティストで、中条はモデルを経て女優に進出、一作ごとにその評価を上げる一方でNTV「another sky-アナザースカイ-」のMCをこなす、まさに旬の輝きを放つ女優。登坂は2014年に『ホットロード』で映画初出演を果たしたときのことを、「撮影を経てアーティストに戻ると、それを観た多くの人に“変わった”とか“表現が広がった”と言っていただきましたが、自分ではその変化はわかりませんでした」と振り返る。「だから今回も、『雪の華』を経ての変化については、これから聞こえてくるのかもしれません」と俳優としての手応えを実感するのが楽しみな様子。役者業の難しい点については、監督から「声がいいし、リズムがキマり過ぎで歌っているみたい」と言われたと明かし、自然にセリフを言うことが難しかったようだ。
一方の中条はモデル出身だけあり、整った顔立ちが目を引くが「基本的にあまり、どう映りたいかは考えない」と潔い。それはモデルの役を演じているわけではなく、普通の人を演じるなら普通でいたいという理由から。「かわいく映るのを追求するのはモデルのお仕事でいい。ただ目の動かし方や一つ一つの表情がどのように映っているか、演技をしながらでも、モデルをやっていたから想像しやすい面はあるかもしれません」というから、二足のワラジを履くからこそ、表現が深まるのは確かなようだ。「うまく映りたいというより、役柄の感情の変化を見てもらいたい」と女優として見据えるものは、しっかりと確立している。
登坂も中条も、ただ器用に簡単に異業種の仕事をこなしているわけではない。『雪の華』でも登坂はぶっきらぼうだけど芯に優しさを持つ青年を、アーティスト活動のときとは別人のようなナチュラルさで演じ、中条もこじらせ気味の純情な女子をキュートに演じた。迷ったり違いを感じたりしながらももがくことが、俳優としての表現に相乗効果として深みをもたらしているように見える。「不器用ですから……」と頑なに俳優としての姿勢を崩さないのは、もはや過去の美しい伝説だ。時代とともに、俳優としての姿も変化していくのは当然のことなのかもしれない。(取材・文:浅見祥子)
映画『雪の華』は全国公開中