あいみょん、創作の源を語る
昨年、紅白歌合戦出場を果たすなど注目度が上昇中のシンガーソングライター・あいみょんが、公開中のアニメ映画『あした世界が終わるとしても』で自身初となるアニメの主題歌と挿入歌を担当。同作の櫻木優平監督のラブコールにより実現したという今回のコラボについて、あいみょんと櫻木監督が振り返った。
【画像】あいみょんが歌う!『あした世界が終わるとしても』予告編
最新IT技術による「スマートCGアニメーション」を掲げるクラフタースタジオが制作した本作。相対するふたつの日本を舞台に、幼なじみのクラスメイト・琴莉を守るために奮闘する高校3年生・真の姿を描き出す。あいみょんは本作で主題歌「あした世界が終わるとしても」、そして挿入歌「ら、のはなし」を書き下ろした。
あいみょんの楽曲は、男性目線で描かれたものが多い。今回の主題歌となった「あした世界が終わるとしても」も、主人公・真の目線から歌詞が作られている。歌詞に登場する“僕”は、自分の弱さを自覚しながらも「君だけは守りたい、せめてそばにいるんだ」と呼びかける。あいみょんならではの痛切なフレーズが印象的な曲となっている。
昨年6月、主題歌を決めようとしていた櫻木監督はあいみょんのメジャーファーストシングル「生きていたんだよな」を聴き、主題歌のオファーを決意。一回目の打ち合わせの際に「すぐに何かが出そうな雰囲気をかもし出していた」と感じた櫻木監督は、あいみょんに「自由に作ってください」と言ったという。
「もともと曲作りは早い方」というあいみょんだが、それでも今回の曲のイメージはすぐに湧き上がったという。「基本的に書き下ろしの曲のときは、台本の中から軸になるキーワードを探して曲を作ったりするんですが、今回は『あした世界が終わるとしても』というタイトルがカギになっていると感じたので、そのまま使わせていただきました。あした世界が終わるとしても、守りたいものは何なのか。自分の色を出しつつ、主人公の真の心情に寄り添った楽曲を作ることができました」と自信を見せる。
この曲を聴いた櫻木監督は「この作品はオリジナルなんで、頭の中でなんとなく感覚でやってきた部分もあったんですが、この曲を聴いて、改めてこの作品はこういう作品だったんだと教えてもらったような気がしましたね」と満足げな顔を見せると、「あいみょんさんはいい意味で、目の前にいる本人と、曲の印象が変わらない方。普段、自分が感じていることを歌にしていて。それが作り事ではなくて、リアルに感じさせることができることが、あいみょんさんの魅力だと思います」と付け加えた。
クリエイター同士、互いを尊重し合っている様子の櫻木監督とあいみょん。二人の創作の源はどこにあるのだろうか。「アイデアが湧くというよりは、作りたい衝動みたいなものが出てきたときにこれを吐き出さなきゃという気持ちになります。ただ映画作りは期間が長いので、そこからはコツコツと積み上げていくという感覚」と櫻木監督が語れば、あいみょんも「例えば先輩アーティストのライブを見て、自分にはできないなと思ったりとか、感動したりすると、なんだか悔しくなって、創作意欲が湧いたりします。あとは10代のころなんかは、もしわたしがこの映画の主題歌を作ったらというテーマで曲作りをしたこともあったんで、映画の影響なんかもありますね」と続けた。
両親の影響で幼少期から「ドラゴンボール」を観るなど、少年ジャンプ系のアニメが好きだったというあいみょん。「アニメって非現実の世界を描くわけじゃないですか。現実と非現実の間を描くのは音楽にも似ているなと思って。わたしもリアルと空想の間を描くことが多いから、アニメって面白いなと思います」というあいみょんの言葉に、櫻木監督も「アニメって全部うそだからこそ、うそが全部リアルに見えるということがあると思うんです」と同意する。
完成した本作を観たあいみょんは、「初めて観たときはすごく泣きました。自分の楽曲がどうこうということではなく、すごくグッとくるシーンがあって。すごく良かったです」と満足げに語った。(取材・文:壬生智裕)