アカデミー賞にノミネートされている是枝監督、現在の思い語る
是枝裕和監督の映画『万引き家族』が第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことを受けて、約100館規模の凱旋上映が決定。それを記念したティーチインイベントが8日にTOHOシネマズ日比谷で実施され、是枝監督が現在の思いを語った。
昨年の第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたのを筆頭に、映画賞で数多くの賞を獲得している本作。先日発表された第91回アカデミー賞候補作の発表では、『おくりびと』以来10年ぶりに日本映画が外国語映画賞にノミネートされたことも話題となったばかり。そのことについてコメントを求められた是枝監督は「ヨーロッパの映画祭はずいぶんまわらせていただいているんで、自分の映画がどう転がっていき広がっていくのかは感じていますが、今回は今まで自分がタッチしていなかったところに作品が転がっていって。後から追いかけている感じ」と現在の心境を明かす。
さらについ先日、ロサンゼルスでアカデミー賞候補者が一堂に会する恒例の昼食会が行われたことを踏まえて、「ここは自分がいていい場所なのかと悩みながら、レディー・ガガと写真を撮ったりして。『大丈夫なのかな、俺は』と思った」と心境を明かし、会場を沸かせた。「あの会場で英語をしゃべっていなかったのは僕と『ROMA/ローマ』に主演した女性(ヤリッツァ・アパリシオ)くらいで。英語をもっと話せれば、写真を一緒に撮った相手の映画をツッコんで話ができるのになという気持ちになりましたね」と付け加えた。
そして改めて「ノミネートされたことは光栄だと思っていますし、この間の昼食会はそれはそれは素敵な時間なんですが、自分がこの先、ここで映画を撮っていくことがあるんだろうかと。そういうことにはまだ現実感を伴っていない」と語ると、「ただ、今回の経験を踏まえて、次は誰と何をやるのかなということはボンヤリと考え始めています。レディー・ガガとというわけではないでしょうが、会場にいらっしゃった役者さんたちと何かできるといいかなということはちょっとずつ思い始めているところではあります」と力強く語った。
現在はカトリーヌ・ドヌーヴ主演の新作を製作中の是枝監督は、「この作品(『万引き家族』)のティーチインイベントはあまりできなかったですし、今日が最後かもしれないですけど、また新作でできたらいいなと思います」とコメント。「この後ロンドンに行きますが、倒れないように頑張ります」と付け加えた。
『万引き家族』は昨年6月8日の初日から8か月目を迎えた今もロングランヒット中で、動員370万人、興収45億円突破という大ヒットを記録している。会場には複数回観たと語る観客が多数来場し、「最後の女の子の表情はどうやって引き出したのか?」「なぜあのラストカットにしたのか」「犯罪を犯す人の感情がとてもリアルだったが、リサーチはどうやって?」「おばあさんがお金を受け取った理由について」等々、内容に切り込んだ鋭い質問が続出。それに合わせて是枝監督の返答も熱を帯びたものとなった。(取材・文:壬生智裕)