『ファースト ・マン』偉人を身近な人間として描く 脚本家&原作者が語る
『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再タッグを組んだ映画『ファースト・マン』(全国公開中)。原作者にして今作にも深く関わったジェイムズ・R・ハンセンと、脚本と製作総指揮を兼任したジョシュ・シンガーの2人が作品について語った。
昨年9月にアメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターで開かれた取材会に参加した2人。丹念なリサーチと本人へのインタビューによってジェイムズが書き上げた「ファースト・マン ニール・アームストロング」はニール公認の伝記として知られており、ジョシュは『スポットライト 世紀のスクープ』でアカデミー賞脚本賞を受賞したハリウッドを代表する脚本家の一人だ。
別世界に住む偉人に分類されることもあるニール・アームストロングを、今回の映画では「一人の人間」として映し出している。そしてそれこそジェイムズとジョシュがこだわり、苦労した部分だった。
「かなり困難なことだった。元々人間の性格というのは明確に描けないものだし、自分について多くを語らなかったニールの場合はさらに難しい。それでもライアンは完璧なアプローチをして演じてくれた」と語るジェイムズは、約4年間にわたって、ジョシュからアームストロングに関する質問を数えきれないくらい受けたという。
「ジェイムズは僕の質問にすべて答えてくれた」と感謝するジョシュは「この映画はニールの人間的な部分に迫り、彼がどんな人物だったのかを観客に伝えることを強く意識している。月へと向かうミッションの中で彼が何を考えていたのかを、ニールが内に秘めて語らなかったことも含めて我々は理解しようとした」と続けた。
(以下、一部ネタバレあり)
また、劇中にはアームストロングが月に降り立ったあとの描写でかなり印象的なシーンがある。その描写には二人とも強いこだわりを持っており、ジェイムズは少し高揚した声で「推測とされるかもしれないが、あのシーンを肯定する証拠も否定する証拠もないんです。彼がクレーターに近づいて歩いていったということはわかっています。それは別に予定していたことではなく、そこでするべきミッションもなかった。でも彼は自分の意志でクレーターの所に行ったんです。そしてその場所でニールが何をしたのかは誰もわかりません」と説明した。
『ファースト ・マン』は人類初の月面着陸に成功したアポロ11号の船長ニール・アームストロングの知られざる葛藤、涙、家庭での父親としての姿などを描いている。共演は『蜘蛛の巣を払う女』などのクレア・フォイ、ゼロ・ダーク・サーティ』のジェイソン・クラークら。(編集部・海江田宗)