橋本愛「あまちゃん」からの成長 「どう演じればいいのかばかりだった」
大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合・日曜20時~ほか)で遊女を演じる橋本愛。出世作となった連続テレビ小説「あまちゃん」(2013)の撮影当時を振り返りながら、「『あまちゃん』でうまくいった感覚とうまくいかなかった感覚は、今でも体に残っています」と自身の変化と成長を語った。
日本人選手が初参加したストックホルム大会(1912年)から、1964年に東京オリンピックが実現するまでの激動の半世紀を、中村勘九郎(金栗四三役)、阿部サダヲ(田畑政治役)のダブル主演で描く「いだてん」。橋本は、本作できっぷのいい姉御肌の浅草の遊女・小梅を好演。脚本の宮藤官九郎とは「あまちゃん」以来、約6年ぶりのタッグとなる。
「最初は、遊女という役柄もあって身構えることもありました。でも台本を読むと、自分のことよりも作品の面白さにド肝を抜かれ、これはすごいドラマだ、宮藤さんの哲学に1年間ついていくのって幸せだなと思うようになりました」と脚本に魅せられ、出演を決めたという橋本。「以前『あまちゃん』で宮藤さんの脚本に触れていたことはありますが、あの時には見つけられなかった宝物が(脚本の中に)きっといっぱいあったな、その掘り起こしをもう一度やりたいと、ずっと思っていたんです」と話す。
「あまちゃん」では、17歳でアイドル志望の美少女ユイを演じ、一躍お茶の間の人気者に。しかし橋本いわく、当時は「感じ取るものも今より少なく、自分がどう演じればいいのかばかりで、照準をどこに定めればいいのかわからない状態」だった。
「理想的なお芝居がきれいな五角形だとすれば、当時はいびつな形でバランスが悪かった。『あまちゃん』でうまくいった感覚とうまくいかなかった感覚は、今でも体に残っているんです。あの頃の自分と今を重ねて、『だからできなかったんだ』と気付くこともあります。少しずつ視野が広がって、景色が違って見えるようになりました」と当時の未熟さを振り返る。
「あまちゃん」で組んだスタッフも名を連ねており、「『あまちゃん』の時に一緒だったスタッフさんは、17歳の頃のわたしを知っているので、撮影現場に行くと何か若返る気がして」と笑う橋本。「自分の変わらない部分を知っている方がいると、どこか安心します」と気心の知れたスタッフに囲まれたならではの和やかな雰囲気をうかがわせた。(取材・文/岸田智)