メリッサ・マッカーシー主演のオスカーノミネート作、監督が語る
人気コメディエンヌのメリッサ・マッカーシーがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた注目作『ある女流作家の罪と罰』について、監督のマリエル・ヘラーが、3月2日(現地時間)ニューヨークの Athena Film Festival の上映後のQ&Aで語った。
【写真】アカデミー賞授賞式では圧倒的なインパクトを残したメリッサ
本作は、伝記作家リー・イスラエルの実話をもとに描いた作品。エスクワイア誌に大女優キャサリン・ヘプバーンを取材した記事が掲載され、1970年代にはセレブの生涯をつづった伝記本でベストセラー作家の地位を得た作家リー(メリッサ)。しかし、化粧品ブランド「エスティ ローダー」の設立者エスティ・ローダーと伝記本をめぐって衝突したことから彼女の人生は転落し始め、旧友のジャック(リチャード・E・グラント)と組んで詐欺師になっていく。映画『ミニー・ゲッツの秘密』(日本未公開)のヘラー監督がメガホンを取った。
製作のきっかけは、出版社で編集者をしている友人がリーの原稿を読んで気に入り、出版予定の話を教えてくれたことだったという。「興味を持ったわたしは、友人に出版用の原稿を送ってもらったの。原稿が気に入ったわたしは、すぐにリーのエージェントに連絡を取ったわ。彼女は、一度も会ったことのない相手に原作の版権を委ねることはしないため、会合を設けることが最初の条件だったわ。それから、リーが財政困難に陥っているときに、彼女に救いの手を差し伸べたデヴィッド・グリーンバウムが製作者として関わることもね」その後、製作総指揮を務めたジャワル・ガーと共に映画化の版権を獲得し、ジェフ・ウィッティに脚本を執筆してもらい、最終稿を仕上げる際に共同脚本家のニコール・ホロフセナーにも参加してもらったそうだ。
だが、実在するリーと作品を通してつながるうえで、乗り越えなければならない障害があったと語る。「彼女のアパートはかなり汚く、ベッドシーツの下には猫のウンチがあったりもして、なかなか近づきにくかったわ。けど、それも彼女の一面だから、そんな彼女の人間性やアーティストとしての葛藤など、一般の人たちにも共感が持てる内容を、われわれ製作陣も理解していることが重要だったのよ」。
また、撮影では、ギリギリまでリチャードとメリッサの顔合わせができなかったそうで、「(それぞれの仕事で)リチャードはロンドンに、メリッサはL.A.にいて、撮影2日前の週末にようやくニューヨークに来てもらえたの。わずか1日のリハーサルで、時間の経過通りに脚本全ての読み合わせをして、お互いのキャラクターの関係をたどっていったわ。そして、明けの月曜日には撮影を開始したのよ」と驚きのスケジュールを明かした。劇中では長年のパートナーのように描かれているメリッサ演じるリーとリチャード演じるジャックの関係性は、二人の実力派ならではといえるのかもしれない。
今作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたメリッサについては「彼女自身、過去に演じてきた役柄とは異なるという意識で、アプローチの過程も全く違ってくることを理解して、参加していたと思うわ。即興的な演技に慣れていて、出演してきたコメディー映画では、現場で自身が脚本を書き換えていたこともあったそうなの。でも今作では、脚本に書かれたとおりにせりふを言いたいと言ってくれて、(リハーサル期間は短かったものの)相当な準備をして臨んでくれたと思うわ。事実、出演・製作・脚本など、あらゆることに関わる彼女を見ていると、おそらくハリウッドの中でも、最も一生懸命に働いている女優の一人だと思うの。実生活では母親でもあり、映画だけでなく、多岐の仕事に携わってプロデュースを行っているわ」と絶賛した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)